不動産取引の透明性・納得感を高めるため何が必要か?
このような事実から、日本の不動産市場が非常にアンバランスで、闇に包まれている面積が大きいことが歴然とします。「両手取引」狙いの「囲い込み」があるから中古の不動産が流通せず、流通性が低いがために不動産は高騰、新築だけがたくさん取引される市場を築いています。
この悪循環が黙認放置されているのですから、不動産が期待していた価格で売れずに悩んでいる売主はあとを絶たないわけですし、理想の不動産を見つけることができず立地や価格で妥協せざるを得ない買主を量産しています。消化不良感を抱えながら取引を終える方がほとんどなのです。
この事実は世界的な調査でも指摘されています。世界中の不動産情報を収集するJLL(ジョーンズ・ラング・ラサール)が2年ごとに発表するグローバル不動産透明度インデックス(2022年版)によれば、日本の不動産の透明度は94カ国中12位とされています。
前回調査の2020年から4ランク上がり、統計開始以来初めて「透明性が高い」と位置付けられる順位に入りました。ただしこれは、現場で行われている不動産取引の透明性が向上したというよりも、不動産の新規開発や法人向けの取引が活発化したことでサステナビリティスコアが改善されたことなどが影響しています。
今もなお取引に納得できていない売主や買主は多く、取引プロセスの透明性は依然として大きな課題です。
多くの不動産会社が、売主側のあずかり知らぬところで、売主にとって不利な取引を行っているのが不動産業界の実状です。つまり、不動産会社の利益が最大限となる取引を実行するため、あずかった不動産を都合のいいやり方で売ろうと目論むのです。
このような歪みに歪みきった不動産業界を治療する方法は、海外の不動産事情を眺めれば明らかです。日本の不動産業界も、エージェント主導で不動産取引が行われる市場へと変化していけばいいのです。
大西 倫加
さくら事務所 代表取締役社長
らくだ不動産株式会社 代表取締役社長
だいち災害リスク研究所 副所長
長嶋 修
さくら事務所 会長
らくだ不動産株式会社 会長