米金利一段の上昇なら「介入戦略に変化」の可能性も
このようななかで、先週の米ドル/円は週初こそ149円近くまで上昇再燃となりましたが、FOMCの後も米ドル上値は重く、注目された金曜日の米10月雇用統計発表の後は146円台へ米ドル反落となりました。
その意味では、これまで見てきたFOMCを受けた米利上げ見通しの上方修正、それに伴う米金利上昇への米ドル/円の反応は意外に鈍かった印象はあります。
その主因は、一気に150円突破まで米ドル高・円安となったことに伴う、「疲労感」ではないでしょうか(言い方は少々変ですが……)。
米ドル/円は8月の130円から一気に150円を突破するまで9週連続の米ドル陽線となりました。3~5月にかけても9週連続の米ドル陽線となった後は3週連続の米ドル陰線となりましたが、一本調子で大幅な米ドル高が進んだ後は、ある程度のスピード調整が必要ということではないでしょうか(図表4参照)。
一方で、そのような観点で見ても、先週まで3週連続で米ドル陰線となったことから、スピード調整はそろそろ終わりに近い可能性が考えられます。
そもそも、今回のFOMCで4%まで引き上げられたFFレートは、次回12月会合で4.5%以上への引き上げはほぼ確実と見られており、その意味ではFFレートを参考に動く米2年債利回りもすでに4.5%を大きく下回るまで低下する可能性は低いと考えられます。
それをこれまでの米ドル/円との関係に当てはめると、150円を下回った水準は米ドルの「下がり過ぎ」の可能性すらありそうです。
以上のように見ると、今週は米ドル高のスピード調整が終わり、米ドル高・円安再燃を探る展開となる可能性がありそうです。
その場合、最大の注目材料となりそうなのは、やはり10日予定の米10月CPI(消費者物価指数)発表でしょう。
FOMCが利上げ見通しの上方修正を続けているのは、いうまでもなく約40年ぶりのインフレの是正が、いまだ目立った進捗となっていないからですが、今回のCPIも今のところの予想は前年比8%と、なお高い物価上昇が見込まれています。
ところで、今後米ドル高・円安再燃となった場合、日本の通貨当局による円安阻止介入との攻防が改めて注目される可能性はあるでしょう。
米ドル高・円安が150円の大台を突破、一気に152円に迫る動きとなったところで、10月21日、日本の通貨当局による米ドル売り・円買い介入が行われたと見られ、怒涛の米ドル高・円安もこれまでのところ一段落した形となっています。
ただ米ドル高・円安の一段落には、この当時米利上げ幅縮小観測などを受けて米金利が低下に転じた影響も大きかったと思います。その意味では、今回のFOMCを受けて米金利が一段と上昇する見通しとなったことは、日本の通貨当局の介入戦略にも変化をもたらす可能性があるかもしれません。
米ドル/円が米金利と連動するなかにおいては、米金利上昇に連れた米ドル高・円安を介入で止めるのは難しいでしょう。この先、米金利上昇に連れて米ドル/円が150円を超えてきても、状況次第で介入の米ドル売り水準をこれまでより米ドル高・円安方向へ修正する可能性も考えられるのではないでしょうか。
以上を踏まえ、今週の米ドル/円は145~150円中心の展開を予想したいと思います。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
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