(※写真はイメージです/PIXTA)

コンサルタントである松本繁治氏の著書『壊れたニッポンを治す為の21の処方箋』より一部を抜粋・再編集し、「一億総中流」から一転してしまった日本の現在を見ていきます。

一億総中流と云われた「過去」

1980年代、日本は飛ぶ鳥を落とす勢いで成長し、日本人は自信に満ちていた。

 

テレビや自動車等に代表されるMade-in-Japan の製品は世界を駆け巡り、仕事で欧米諸国に行けば妬み半分に尊敬され、競争相手として認知されていた。また東南アジアの人達からは尊敬の目で見られ、彼等にとって日本は憧れであり、目標でもあった。そしてアメリカでは『Japan as number one』と云うタイトルの本が出版され、妬みからジャパンバッシングが起こっていた。

 

給料も毎年上がり、一億人総中流と云われる中、多くの日本人が幸せだった。仕事は沢山有り、下請け、孫請け、そして孫請けの下請けに仕事を依頼していた状態で、本当に社会全体が浮かれていた。

 

一方の現在は、世界の一般消費者に届く日本製品は自動車くらいで、その他の一般消費財は殆ど世界の市場から姿を消した。

 

日本製のテレビは海外では高過ぎて殆ど売れず、液晶パネルやソーラーパネル工場は日本には殆ど残っていない。半導体等では現時点では日本のメーカにまだ強みがあるが、完成品の日本製は数少なく、部品を安価な価格で販売しているのが主体だ。日本の製造品の強みの原資となっている工作機械製品も、台湾、韓国、そして中国が年々力を付けてきている。

 

この様にB to Bビジネス(企業間取引)の世界でも先行きは決して明るくなく、その地位は年々下がってきている。

 

日本製品の地位を維持するために、従業員の給料を据え置きし、非正規社員を増やす事でコストの削減を図ってきたが、その愚かな努力は実らず、多くの一般消費者向けの日本製品は世界から姿を消した。そしてその置き土産の様に、一億総中流が姿を消し、貧困層が増えていった。

 

一億総中流時代を社会人として過ごした人達は既に50歳半ば以上になり、50歳以下の人達にとっては噂に聞く昔話になりつつある。

 

1990年代半ばからは大学を出ても就職できず、フリーターが増えた。今はそのフリーターは死語に近く、非正規労働者となって安い賃金で働かされている。そして新入社員の賃金もここ30年程殆ど上昇していないが、物価が上昇していない事が唯一の救いである。

 

2021年秋の自民党の総裁選挙と衆議院選挙を境に、ここ30年程の停滞を問題視する政治家が増えてきた。しかし、彼等は問題点の本質・根本原因を把握している様には感じられない。今の日本に必要な事は、アメリカの前大統領が言った「Make America Great Again」の様に、「Make Japan Great Again」である。

 

これを実現するために改善・改革すべき課題は沢山ある。そのための処方箋を考えていきたいが、その前にもう少し現在の日本が抱える課題にお付き合い頂きたい。

次ページ「金銭的事情で大学進学を諦める」という異常事態

※本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『壊れたニッポンを治す為の21の処方箋』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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