(※写真はイメージです/PIXTA)

莫大な資産を保有する日本の富裕層は、近年大きく変わった……海外移住のサポートを行い、これまで2万人を超える富裕層をみてきた大森健史氏は、そう実感しているといいます。いまどきの“シン富裕層”の実態とは? 今回は、気軽な気持ちで外国株投資を行った50代開業医の話を中心に、富裕層のリアルをみていきます。

アベノミクス以降急増した「自宅投資家」

さらに、同じ「②資本投資型」の中で、最近非常に多いのが、自宅への投資で稼いだサラリーマンタイプです。「都心マンションの購入を繰り返すことで、確実に資産を増やし続ける」のです。

 

都心の一等地のマンションは、完成前に購入し、完成・完売して1年くらい経過したら2割乗せて売ることができるくらい、高騰し続けています。東京オリンピック開催に合わせて2020年4月に完成した神宮外苑のマンションも、2年後には約3割ほど利益を乗せて売りに出されています。

 

こうした「自宅投資家」になることは、それなりの企業の正社員で多額の住宅ローンを組めることと、ローンを背負う自らの覚悟さえあれば、投資の元手となる資産を持っていない平凡なサラリーマンであっても、容易に実行できます。

 

なぜなら一般的に、年収500万円のサラリーマンなら5,000万円ほど借りられますが、夫婦共働きであればペアローンや年収1,000万円の上場企業のサラリーマンなら1億円ほどのローンが容易に組めるからです。

 

「3,000万円特別控除」利用で資産増

そして何よりも、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」という制度が強い味方となります。

 

これは岸田政権によって不動産の税制が住宅ローン減税を含めて厳しく変更されつつあるため、いつまで現条件が適用されるかわかりませんが、このような不動産の節税制度を前年、前々年度に使用せず居住した自宅の買い換え時の売却益には、3,000万円の特別控除が適用できるというものです。

 

不動産を売却した場合、当然ながら所得税と住民税が発生する可能性があります。しかしこのふたつの税金は、儲けが出たときにしか発生しません(正確には、「課税譲渡所得=収入金額-(取得費+譲渡費用)特別控除額」で算出される金額に、税金がかかってくるということです)。

 

ここでは一旦、譲渡費用を無視して、最も単純化して例を挙げましょう。

 

1億円で買った自宅マンションが、この税制を活用して1億3,000万円で売れたとき、3,000万円がまるごと非課税で、自分の利益になるということです。一度使うと次に利用できるのは3回1月1日を迎えた後になります。

 

この特例を適用しない場合、不動産は5年以下で売却すると、売却益に所得税30%、住民税9%、復興特別所得税0.63%が課されます。合計で39.63%、つまり約1,200万円が税金として取られ、利益は1,800万円程度となります(仲介手数料等の経費は除外)。

 

ところが、この特例を適用すれば、1,200万円を払わずに、3,000万円がすべて手元に残るのです。

 

さらにこの自宅投資を夫婦で行うとすると、おおよそ3年ごとに最大2人で6,000万円の不動産売却益の非課税枠が得られることになります。

 

極端な話ですが10年程度あれば夫婦で最大1億8,000万円(3,000万円×3回×2名)の売却益が、非課税で手元に残せる可能性があるというわけです(管理費、修繕積立金や手数料や取得税等を考慮せず)。

 

こうした自宅投資で資産を築いた人が、アベノミクス以降でたくさん生まれたのです。

 

日本のシン富裕層
なぜ彼らは一代で巨万の富を築けたのか
大森 健史 著
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大森 健史

株式会社アエルワールド

代表取締役

 

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※本連載は大森健史氏の著書『日本のシン富裕層』(朝日新書)より一部を抜粋・再編集したものです。

日本のシン富裕層 なぜ彼らは一代で巨万の富を築けたのか

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大森 健史

朝日新書

不動産投資、暗号資産、オンラインサロンなど、自らの才覚で巨万の富を手にする人々が続出し、日本の富裕層は近年大きく変化した。海外移住サポートを通して2万人以上を知り尽くした著者だから知る彼らの哲学、新時代の稼ぎ方…

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