安心・安全な医療には病院側と患者側の相互理解が必要
病院は病気やけがを治すところ、安全に安心して医療を受けるのが当然、と思っているかもしれません。もちろん医療従事者もそうありたいと思っています。
しかし、医療は不確実、予測できない様々なことも起こります。
「医療事故」と聞くとどんなことを考えるでしょうか。
「病院のミス」「病院が悪い」「間違えた人が悪い」そんなふうに思うかもしれません。「医療事故」とまではいかなくても、「治療がうまくいかなかった」「間違えられた」「病院で嫌な思いをした」など様々な経験をお持ちの方もいるでしょう。
では安全、安心の医療とは、具体的にどのようなものを指すのでしょうか? 実際に病院ではどのような体制がとられているのでしょうか? また、いざ「医療事故」やトラブルが起こってしまった際にはどう対応しているのか? お互いが気持ちよく、医療を提供し、それを受けるにはどうしたらよいのか? など患者さまから病院への疑問や、現場が抱える問題はたくさんあります。
さらに、できれば関わりたくはない「医療事故」について。気持ちよく賢く医療を利用するために大事なことについてなども併せて、「医療安全」というものに専門的に関わってきた立場からお伝えしたいと思います。
病院には「医療安全」を担当する部署がある
私は合計すると6年半、大学病院で「医療安全管理部」の仕事をしていました。最初の2年間(2008年~2009年)は診療科の仕事をしながら兼任していました。その後3年間離れたのち、再度、今度は専任の「医療安全管理者」として、2013年から4年半務めました。
ターニングポイントとなったのが、群馬大学病院での手術後の「医療事故」を発覚させた2014年です。この後の3年半はこの事故の対応にかかりきりでした。
どの病院にも「医療安全管理」を担当する部署があります。
「医療安全管理部」(病院によって名称はいろいろです)は通常、医師、看護師、薬剤師など多職種のメンバーからなります。ある程度大きな病院では、看護師には専従の「医療安全管理」だけを担当する人がいます。
どの病院でも看護師は最大人数を有する職種であり、患者さんに直に接する機会も多いので、専従者をおいて対応しています。
医師の専従者はこれまで少なかったのですが、群馬大学病院の「医療事故」以降、厚生労働省の方針で「特定機能病院」という大学病院を含む大きな病院では、「医療安全管理」専従の医師をおかなければならないということになりました。この事故をきっかけに「安全管理体制」「医療安全」に対する意識は大きく変わりました。
病院によっては薬剤師が専従者となっていることもあります。薬の間違いは大きな事故につながるので、正しい知識を持って対応することが必要があるからです。
通常、「医療安全管理部」は多職種のメンバー数名で組織されます。病院内の各部門にも担当者がおり、連携して、事故の予防のための日常の対策、職員への啓発など、「医療安全」のために活動する体制を整えます。
「医療安全管理部門」の責任者には副病院長(医師)など、病院を代表する立場の者が就いていることが多く、大きな事故には病院として対応していきます。