黒いメラニン色素に反応するレーザー
レーザーによる医療脱毛の仕組みは、レーザーが毛に含まれる黒いメラニン色素を標的とし、毛包および毛包周囲を破壊・変性させることで、毛の再生を止めるというものです。そのため、メラニン色素が抜けて毛色が白くなった白髪に対して、レーザーを照射しても反応せず、脱毛できません。こうした場合、白髪に対しては針脱毛を行うこととなります。
著者のクリニックでは針脱毛を行っていないため、初めに患者さんへ「グレイヘアーのひげを脱毛しようとすると、白髪が残ってしまいますよ」とお伝えします。ですが「たとえ白髪部分は残っても、黒い毛がなくなるだけでも楽になるから」と希望される患者さんもいらっしゃるので、グレイヘアーの方のひげ脱毛も行っています。
「終活」としての脱毛
近年はメディアで「終活」としての脱毛が取り上げられているのを見て、「レーザー会社が新しい機器を売ろうとして宣伝しているのだろうか?」とうがった目で見ている自分がおりました。要介護になったときのための準備として脱毛をしておくと、将来的に介護者の負担を軽減することが出来るというものです。
ですが最近は、実際に「親の介護をしてみて」「親施設で介護を受ける姿を見て」という動機でVIO脱毛を希望される患者さんにも出会います。
また、とある患者さんは「年齢を重ねて、VIといったデリケートゾーンの脱毛をご自分でするのが怖くなって脱毛を希望した」という動機を教えてくれました。
未熟な著者は「終活」としての脱毛、特にVIO脱毛に当初は懐疑的でピンとこなかったのですが、人生の先輩である患者さんたちの心境を聞いて、「なるほどな。」と合点がいきました。
いつがベスト?…脱毛を受けるタイミング
ひげ脱毛もVIO脱毛も、すべての毛が白髪になり切るその前に、行なってよいものなのかもしれない…と思っています。特に、乾燥肌・敏感肌で肌荒れを起こしやすい方には、早めの施術をおすすめします。
ひげ脱毛もVIO脱毛も、レーザー照射による痛みの大きい部位です。健康な若年層ならば笑気麻酔を行ったうえで施術を受けるというのも選択のひとつかと思います。しかし、中年に差し掛かると、笑気麻酔のようにリスクがゼロではない麻酔を深刻な病気の治療以外の理由で受けるのはいかがなものかと思うのが正直なところです。
レーザー照射には痛みが伴いますが、冷却することで、無事にレーザー脱毛を受けられる方がほとんどです。気になる方は、一度皮膚科で相談してみるのはいかがでしょうか。
蒲澤 美代子
北参道駅前ひふ科 院長
日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医