米ドル高を後押しする「英ポンド下落」
このような米利上げ見通しの上方修正とは別に、このところ米ドル買いを後押ししている可能性のある要因が英ポンドの下落です。
英ポンドは、トラス新政権が発表した減税政策を受けて、財政赤字拡大への懸念から一時急落となりました(図表4参照)。
その後、中央銀行であるBOE(イングランド銀行)による債券買い支えや、減税の見直しなどにより、英ポンドは反発に転じました。
しかし、マーケットの英財政赤字への懸念は強く、BOEの債券買い支えが14日で終了することに伴い、英ポンドを含めた「英国売り」再燃への不安は残っています。
このような英ポンド売りが、米ドル買いを後押しする可能性も要注意でしょう。
テクニカル指標が示す米ドル高一服の可能性
以上のように、ざっと見渡す限りでは、米ドル高要因ばかりが目に付くというのが正直なところでしょう。こういったなかで、米ドル高が一服、さらには米ドル安に反転する可能性があるなら、それはテクニカルな要因が基本になるのではないでしょうか。
たとえば、米ドル/円の日足チャートは14日まで8週連続の米ドル陽線となりました(図表5参照)。さらに週足チャートは9週連続の米ドル陽線となりました(図表6参照)。
以上のように見ると、さすがに米ドルの続伸も、そろそろいつひと息ついてもおかしくない段階を迎えているようにも見えなくありません。
ちなみに、3月から5月にかけて米ドル陽線が9週連続で一段落した後は3週連続の米ドル陰線となりました。また、7月を中心に米ドル陽線が7週連続した後は2週連続で米ドル陰線となりました。
以上を参考にすると、米ドル陽線の連続記録がひと息ついた後は、2~3週米ドル陰線となり、5~10円程度の米ドル反落が起こる可能性はあるのではないでしょうか。
また、米ドル/円の5年MA(移動平均線)かい離率はプラス30%を大きく上回ってきました(図表7参照)。
これを見ると、単に一本調子の米ドル高の調整局面ということだけでなく、今回の米ドル高・円安トレンド自体が、経験的にはいつ終わってもおかしくない段階を迎えているようにも見えます。
循環的な米ドル高の動きは、すでにいつ終わってもおかしくない段階を迎えているものの、米インフレ対策に伴う「米金利上昇=米ドル高」にはなお収束が見えず、そのなかで米ドル高・円安トレンドの「延長戦」が続いているというのが現在の状況ではないでしょうか。
以上を踏まえた上で、今週の米ドル/円の予想レンジは145.5~150.5円を想定したいと思います。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】