(写真はイメージです/PIXTA)

2023年の税制改正はどのようなものになるのか。ニッセイ基礎研究所チーフエコノミスト、矢嶋康次氏の分析です。

1―今年度も、効果は限定的か? 

ここ数年、税制改正の決まり文句は「効果は限定的」。今年は、違う評価になるか注目される。

 

今年議論される改正項目は、人への投資、脱炭素、自動車、NISA、ストックオプションなど[図表1]。金融市場では、年末に策定する「資産所得倍増プラン」や、その目玉である「NISA」や「金融所得課税」に注目が集まっている。ただ、海外目線で「投資対象」という意味では、日本企業や日本経済の復活が、期待できる税制改正となるかがカギを握る。

 

【図表1】今年議論されそうな税制項目

2―人への投資に注目、メリハリの効いた骨格は維持できるか?

「人への投資」は、デジタル、脱炭素、スタートアップ、科学技術と並び、岸田政権の看板政策「新しい資本主義」の重点分野。ただ、企業が従業員の能力開発に費やす規模(対GDP比)でみると、日本の人材投資は欧米と10倍以上の開きがある[図表2]

 

【図表2】国内総生産のうち、企業の能力開発費の割合

 

政府はこの現状を変えるため、従業員へのスキルアップ研修などの「学び直し」を行い、生産性向上に取り組む企業に対して減税を実施することを検討している。

 

自民党の宮沢洋一税制調査会長は、今回の税制改正で『人への投資に大規模な減税をしたい』と述べる一方、『法人税を増やして、人への投資をやった企業に回す』と発言している。

 

【図表3】企業が保有する現預金と法人実効税率の推移

 

この発言の背景には、歩みが遅い企業への苛立ちも感じられる。現在、日本の法人実効税率は、法人税(国税)と法人事業税(地方税)などを合わせた29.74%。政府は2015年度以降、税率を段階的に引き下げてきたが、減税分が賃上げや設備投資などに回る状況とはなっていない。

 

ある程度一律を大事にした税制から「アメとムチの政策」へとシフトする。反発はあるだろうが、硬直した状況に変化を生むためにも、メリハリの効いた骨格は維持されるよう期待したい。

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2022年10月14日に公開したレポートを転載したものです。

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