(※画像はイメージです/PIXTA)

所得税・住民税をお得に「節税」できるといわれている方法の一つが「ふるさと納税」です。しかし、どうもいま一つわからないのが、「結局いくら節税できるのか」ということです。本記事では、具体例も用いて、その答えを明らかにします。それと同時に、ふるさと納税という制度が抱える問題点についても解説します。

ふるさと納税の問題点

このように、ふるさと納税は、金銭的な損得で評価すれば、それを行うごとに、「返礼品の市場価格-2,000円」の分だけ「節税」の効果があるといえます。

 

しかし、ふるさと納税には以下の3つの問題点があり、「節税」のみを追求すると弊害が大きくなってしまうことを見逃すことはできません。

 

1.地方自治体のトータルの税収が減る

2.自分の自治体の行政サービスに支障が生じるおそれがある

3.高額所得者ほど得をする可能性がある

 

それぞれについて解説します。

 

◆問題点1.地方自治体のトータルの税収が減る

第一に、地方自治体のトータルの税収が減るということです。

 

すなわち、ふるさと納税を行うごとに「返礼品の市場価格-2,000円」の額の「節税」の効果があるということは、裏返せば、その分、地方自治体のトータルの税収が減っているということです。

 

もちろん、返礼品はその地方自治体の宣伝にもなりますし、返礼品を提供する地元の業者にとってもPRの効果があります。実際に、一部で「経済的効果」についての試算が行われています。

 

しかし、地方公共団体のトータル税収の減少がカバーされたかどうかとは別の問題です。その点について数値的な評価を行うことは困難であり、あくまでも「風が吹けば桶屋が儲かる」的なものと考えるべきです。

 

◆問題点2.自分の自治体の行政サービスに支障が生じるおそれがある

第二に、自分の自治体の税収が減り、行政サービスに支障が生じるおそれがあるという問題があります。

 

地方自治体が担う住民サービスのなかには、ごみの収集・処理、上下水道等や道路、公共施設等のインフラの整備など、住民の日常生活の維持に必要不可欠なものが多いのです。ふるさと納税によってそれらに支障をきたすレベルになってしまっては、本末転倒です。

 

たとえば、東京都世田谷区の保坂展人区長は、ふるさと納税により70億円の税収が失われ、事業の先送りや住民サービスの削減といった選択を迫られていると憂慮を表明しています(世田谷区報2021年(令和3年)10月2日号参照)。

 

また、「名物」「名産品」等のブランドイメージが乏しい自治体は、他の自治体の住民から寄付を集めようにも、どうしても不利になってしまいます。

 

何かと「自己責任」がもてはやされる世の中ですが、自己責任で尽くせる努力にも限度というものがあります。

 

◆問題点3.高額所得者ほど得をする可能性がある

第三に、ふるさと納税は、経済的余裕のある高額所得者ほど得をするしくみになっています。

 

まず、先述したように、ふるさと納税には限度額が設けられており、高額所得者ほど大きくなっています。

 

また、返礼品の市場価値にかかわらず、自己負担額は2,000円です。寄付金額は返礼品の市場価値に大きく左右されるので、大きな額の寄付をすればその分だけ価値の高い返礼品を受け取れる傾向があります。その結果、高額所得者ほど「節税」できる額、すなわち「返礼品の市場価格-2,000円」の額が大きくなる可能性が高いといえます。

 

しかも、寄付した額のうち2,000円の自己負担額を超える分については、すぐ返ってくるわけではなく、いったん持ち出しとなります。手持ちのキャッシュに余裕がある人ほど有利です。

まとめ

このように、ふるさと納税は、「返礼品」の市場価格が2,000円を超えるのであれば「何もしない場合と比べて収支がプラスになる」という意味で「節税」になる可能性が高いものです。

 

しかし、同時に、ふるさと納税をする人がいたずらに「節税」のみを追求すれば、「地方自治体のトータルの税収が減る」「自分の自治体の行政サービスに支障が生じる」「高額所得者ほど得をする」という弊害が大きくなるリスクがあります。

 

総務省のHPにはふるさと納税の意義について記載されています。敢えてここで引用することはしませんが、「節税メリット」のみにとらわれず、本来の意義、理念を理解して活用することが求められているといえます。

 

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