年金は「積み立て」ではなく「保険」
年金についての最大の誤解は、年金が積み立てた金額を将来受け取れる仕組みではなく、「保険」だということです。
一般に保険とは、何か悪いことが起こったときに、保障される仕組みです。けがをしたときに支払われるのが傷害保険、死亡したときに支払われるのが生命保険、地震で被害を受けたときに支払われるのが地震保険です。
では、年金「保険」というと、仕事をリタイアした後、「長生きしてしまったとき」に支払われます。本来、長生きすること自体は悪いことではなくむしろよいことです。
しかし長生きという「リスク」に備えるために年金「保険」が存在します。リスクに対する備え(これをリスクヘッジと言います)ができていれば、安心して過ごせます。安心して長生きできるということです。
年金は保険ですから、保険料を支払わなければならないし、保障は保険料の支払いの条件を満たしたときに受けられます。保険料を納めていなければ万一のことがあった場合にも、助けてもらえないのです。だから保険料を支払うことが重要です。
たしかに年金保険料の負担は、今後だんだん大きくなっていくかもしれませんし、受け取れる年金額も減っていくでしょう。しかし、だからといって未加入や未納でいると、大きな損をしてしまいます。
年金保険料は無理をしてでも払うほうがよい
サラリーマンやサラリーマンの夫を持つ主婦(サラリーマンの妻を持つ主夫)は、厚生年金保険の第3号被保険者に該当するケースが多く、仕組み上、年金未加入や未納が発生しにくいのですが、自営業者、フリーランス、非正規社員やその配偶者である主婦(主夫)は、それぞれが国民年金保険料を毎月支払う必要があります。生活が苦しくなると、年金保険料の支払いは後回しになる、という人もいます。
しかし他の出費を切り詰めてでも、年金保険料は払ったほうがよいです。年金を受け取れるようにするためには、最低10年保険料を納め続ける必要があります。どんなに苦しくても、とにかく10年は納めるようにしましょう。
「それでもどうしても難しい」という場合は、「保険料免除制度」「納付猶予制度」という2つの制度があります。どうしても経済的に納付が困難な場合、申請すれば保険料の支払いを、一部あるいは全額、免除あるいは猶予してもらえる制度です。事情によって、全額、4分の3、半額、4分の1の免除があります。
たとえ保険料を免除されても、将来年金を受け取る年齢になったとき、たとえば全額免除の期間分も「2分の1の年金」を受け取ることができます。なぜなら国民年金の2分の1は、税金で賄われているからです。財源が保険料ではなく、税金なのです。
未納にしてしまうと、たとえ納税していても、本来受け取れる分でさえ受け取る権利を失ってしまい、税金の払い損になってしまいます。