労働生産性低下の要因
労働生産性の前年同期比はマイナス2.4%だ。これは過去50年遡って、70年代のオイルショック時並みの落ち込み方である。
生産性低下の要因はいくつかある。企業の投資不足もそのひとつである。しかし、もっとも単純な理由は、雇用が戻り過ぎているということだろう。
たとえば、リーマンショックの時は雇用が大きく減少しても生産はそれほど落ちなかったから生産性が急上昇した。コロナの発生時も同様であった。
ところがどちらのケースも雇用者が戻るにつれ、生産性の伸びが鈍っているのがわかるだろう。つまり、生産性の悪い人間を多く雇用し過ぎているということである。
求人件数も大きく減少し始めた。アマゾンも主力の小売事業で2022年末まで技術職を含む幅広い役職で採用を止めると報じられている。しばらく米国景気は雇用調整でぱっとしない時期が続くかもしれない。しかし、それは長期的にみれば、米国の生産性を適正なレベルに引き戻すために必要不可欠なプロセスであろう。それこそが金融引き締めと景気減速による米国経済へのポジティブな作用である。
広木 隆
マネックス証券株式会社
チーフ・ストラテジスト 執行役員
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