民主主義先進国の政治が変化している
ウクライナ戦争でのロシアの困難化、中国経済の顕著な減速など、専制国家群の挫折が目立つ。しかし、民主主義先進国においても国内での分断が深刻化している。欧州先進国で極右と見られるポピュリスト勢力が台頭し、米国でも共和党が伝統的保守政策からトランプ党へとすっかり支持基盤と政策が変わる、などの変化が起きている。
欧州での「右派ポピュリスト」の台頭
9月末、元ファシストによって設立された「イタリア社会運動」の流れをくむ右派「イタリアの同胞(FDI)」が、上下院の総選挙で4年前の4%から26%へ驚異的な得票率の伸びを見せ第1党に躍り出た。FDI党首のメローニ氏が首相に就任する可能性が大きい。
寛容の国といわれたスウェーデンでも、与党の社会民主労働党が第1党の座を確保したものの、反移民を掲げるポピュリスト政党の「スウェーデン民主党」が20%の得票で第2党に躍進、第3党の穏健党などと合わせて右派勢力が過半数を制し、左派連合から右派連合へと政権が交代するとみられている。
フランスでは4月の大統領選決選投票で、マクロン大統領に挑戦した極右政党「国民連合」のルペン氏の得票率が42%と、前回2017年の34%から上昇した。沈静化するかとみられていた右傾化の流れがウクライナ戦争、エネルギー価格高騰による生活困難の強まりにより一段と加速した。
これら右派ポピュリスト政党は、低学歴のブルーカラーを支持基盤とし、彼らが失った雇用、所得の責任をグローバリゼーションや、移民に負わせ、EUに対して批判を強める。EUの国際主義的な志向やそれと関連するリベラリズムへの嫌悪を隠さない。
米国:支持基盤が大きく変わった民主・共和両党
この流れは米国においても顕著である。共和党が欧州の右派ポピュリストと政策的に共通項をもつトランプ氏に乗っ取られた有様である。
TPP反対、アメリカファースト、移民抑制など排外主義的傾向、伝統的家族価値観の尊重、中絶禁止、LGBTの権利軽視、銃規制反対、などは、現状の価値観に対する幅広い不満の表明といえる。
米国ではここ10年で民主・共和両党の支持層が大きく変わった。民主党は高等教育を受けた富裕エリートの支持に偏った政党になりつつある。
他方、共和党は低学歴の白人労働者階級だけでなく、中南米系、黒人系労働者からの支持を大きく伸ばしている。人種を超えて労働者階級が共和党支持に向かっている傾向が伝えられる。
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