誰もが科学を駆使したトレーニングができる!
ネクストベースについて、もう少し詳しく見ていきます。
設備に関しては、ドライブラインに装備されている計測・分析用の機器類はほぼ揃っています。施設の構築時、バイオメカニクスの権威であり、国立スポーツ科学センターの研究員等も歴任したスポーツ科学者である神事努取締役を中心に慎重に吟味し、高額でも意義があれば精度の高い機材を揃えています。
中にはドライブラインの保有機材よりも高性能なものもあります。
たとえば、アスリートのパフォーマンスを計測する基本的な手法であるモーションキャプチャによる動作解析に関しては、ネクストベースは世界最高性能と評されるVICON社製のシステムを導入し、1,000Hzもの高速撮影により高精度で正確性の高い計測を実現します。
ドライブラインのシステムは同社のホームページ(https://www.drivelinebaseball.com/research-lab/)によれば数百Hzとのことですから、ネクストベースのシステムの高精度さがうかがい知れるというものです。
このほか、VR(バーチャル・リアリティ)のゴーグルを装着し、バットをスゥイングし、バーチャル空間で仮想の投手が投げてきたボールに打者がどう対処するかの能力を養うユニークなトレーニングも行っています。選球眼やボールの軌道の予測能力を鍛えることができます。
ネクストベースでは、このようにあの手この手で、小柄な日本人でも科学的な武装によるトレーニングによってMLB選手並みに強くなることができる可能性が満載された施設なのです。ここで、誰もが大谷選手や佐々木選手になれるかもしれないのです。
根性論から科学へ、変わるスポーツの世界
このように、スポーツの世界はじわりじわりと変革の兆しを見せています。目に見える形で現れたのが、大谷選手の二刀流であり、夏の甲子園を征した仙台育英のエース4本立てのチーム作りです。
しかし、これらは氷山の一角で、文化の一端をも担うスポーツ業界のあり方は今後、社会の基本的なものの考え方の基準にまで影響を及ぼすかもしれません。
“たられば”の話で言えば、ドライブラインより早くネクストベースがトレーニング施設を開設していた可能性もなくはないのです。なにしろ、ドライブラインの科学を取り入れたトレーニングはネクストベースの神事取締役が掲げるスポーツ科学論に通ずる内容だからです。
しかし、佐々木朗希選手が高校時代エースでありながら最終戦で登板しなかったことに批判が集まったり大谷選手の二刀流が理解されなかった当時の日本では、時期尚早だったことでしょう。「今から」でちょうどよく、いよいよ大きな転機をスポーツ界にもたらそうとしているのかもしれません。
アスリートのあらゆる動作が数値化されることは、彼らのトレーニングの最適化だけではなく、スポーツ解説の分野にも影響を及ぼし、観戦のあり方をも変革しそうです。
事実、ドライブラインやネクストベース以外の場でも科学はスポーツ界を変革しつつあります。たとえば、近年プロ野球の各球団はホームグラウンドに打球のトラッキングや球質を映像解析するシステムを装備するようになっています。収集したデータは、もちろん選手の育成に役立てられています。
最近破竹の快進撃を続けるヤクルトスワローズはホークアイというプレイ分析システムをいち早く導入し、このマシンが昨年の日本シリーズ奪取に一役買ったとさえ言われています。ホークアイとはイギリス生まれのシステムで、カメラで捉えた選手のプレイの模様をさまざまな角度から収集し、データ化します。
ホークアイの開発・製造を担うソニーの関連会社は、生成されたデータの分析からトレーニングの最適化や戦術指導までのサービスを一元化して提供しています。審判の補助的に利用されるケースも多く、サッカーやテニスのビッグカードで試験的に審判として導入されたこともあります。そのほか陸上やモータースポーツに及ぶまで幅広く利用されているのです。
またMLBでは、軍事用追尾レーダーの技術を応用した、野球のありとあらゆるプレイを数値化するスタットキャストも全本拠地球場に導入されています。球速、打撃後の打球速度、走塁のリード距離、守備時の送球速度など、測定可能な項目は80以上に昇ります。
これらの設備により得たデータはトレーニングだけでなく、故障時の対策、観戦者への解説の補足等さまざまなシーンで活用されています。科学はトレーニング法だけでなくスポーツの楽しみ方まで改革しているのです。
スポーツ関連のPRのあり方も大きく変わってきそうな気配を感じます。
試合の解説にデータがフル稼働するようになり、観戦の仕方も変化していくでしょう。
MLBの公式ホームページでは昨年のシーズンオフに大谷選手の2021年の戦績に関する解説を公開していますが、ここにもスタットキャストで計測したデータがふんだんに使用されています。
今後、大きな転換期を迎えつつあるスポーツ業界から目が離せません。