漠然と薬を投与され続けている高齢者…
ここまでポリファーマシーに関する医療者側の要因を書きましたが、患者側の要因についても考えてみましょう。
日本人の高齢者は薬を飲むことを好むと言われています。実際に皆さまも「病院を受診する=薬をもらいに行く」という感覚はあったりするのではないでしょうか。医師が十分診察をした結果、お薬を処方する必要はないと判断した場合でも、納得してもらえず結局お薬を処方するということも少なくありません。
それに加えて高齢者では加齢に伴い様々な症状が出現します。「体のかゆみ」「めまい」「おしっこが近い」「眠れない」「膝が痛い」など、挙げていくときりがありません。これらの症状に対して短期間だけお薬を出すならまだ良いのですが、そのまま漫然と投与されることは少なくありません。
それではポリファーマシーを防ぐにはどのようにするのが良いでしょうか?
常にポリファーマシーを意識している医師は良いですが、残念なことにそのような医師は決して多くはないのが現実です。また医師としては表立った有害事象がなければ、敢えて自分が処方しているお薬を中止にはしないものです。私も自分から患者さんに減薬の提案をする時は、「自分で処方しておいてなんですが、お薬の量も多くなってきたので、少し減らしてみませんか?」なんて切り出してみています。
そこでまず患者さんがするべきことは、自分が飲んでいる薬が何の目的で処方されているのかを理解することです。もちろん医師としては患者さんにとって必要だから処方するわけですが、患者さんも自身が何のために薬を飲んでいるのかは知っておくべきです。そうすることにより、現在は症状が改善しているのに漫然と処方が続くというようなことを防ぐことができます。
そしてお薬の種類がだんだん増えてきた場合は、一度主治医に対して、「何か減らせる薬はないですか?」と聞いてみて下さい。
もちろん、患者さんの病気によってはどれも必要性の高いお薬のため減薬が困難な場合はありますが、大抵の患者さんは、中止することができるお薬が含まれている場合が多いです。上述の通り、医師は患者さんの状態が安定していれば、そのまま処方薬を継続することが多いですが、患者さんからの減薬に関しての提案により、現在の処方薬について再考するきっかけになります。
いかがでしたか? 皆さんも一度ご自身の飲んでいるお薬を確認してみて、減らすことのできるお薬がないか主治医に聞いてみて下さい。
岡田 有史
総合内科専門医
日本スポーツ協会公認スポーツドクター