「高齢者の薬漬け」「医療費66兆円超の未来」…日本医療にはびこる“薬”問題について、現役医師が解説

岡田 有史
「高齢者の薬漬け」「医療費66兆円超の未来」…日本医療にはびこる“薬”問題について、現役医師が解説
(※写真はイメージです/PIXTA)

「ポリファーマシー」─馴染みのない言葉だという人も多いと思います。日本語に直すと「多剤服用」の意味で、じつは高齢者を中心に深刻な社会問題となっています。総合内科専門医で日本スポーツ協会公認スポーツドクターの岡田有史医師に、なぜポリファーマシーになってしまうのか、ポリファーマシーを避けるために患者さんや家族ができることについて解説いただきます。

大病院でポリファーマシーとなりうる理由

それでは本題に入りますが、どうしてポリファーマシーになってしまうのでしょうか? 飲むお薬の種類が徐々に増えて、ポリファーマシーに至るには様々な要因が関わります。

 

まずは我々医療者側の要因について考えてみます。

 

皆様は何かしらの病気で定期的な通院が必要になった場合、病院と診療所のどちらに通院したいと考えますか? 病院には各診療科の専門医がたくさんいますし、いざとなったら入院もできます。一方、診療所は予約なしでも受診しやすく、ちょっとしたことも相談しやすかったりします。このように病院と診療所にはどちらにもそれぞれのメリットが存在します。

 

それではポリファーマシーの観点ではどうでしょうか。治療を要する病気が1~2つくらいの場合では、病院(もしくは診療所でも可能)でその病気の専門医に診てもらうことが質の高い診療を受けることに繋がるかと思います。

 

ですが、特に高齢者の場合で治療を要する病気が複数ある場合では少し状況が変わってきます。

 

スウェーデンの介護施設で行った調査によりますと、処方に関わった医師の数が多いほど処方数が多く、処方の質も悪かったと報告されています。

 

例えば、高齢女性で「高血圧」「糖尿病」「逆流性食道炎」「骨粗しょう症」の持病がある場合、大きな病院では「循環器内科」「糖尿病内科」「消化器内科」「整形外科」など最大で4つの診療科に通院することになります。そうすると、仮に1つの診療科で1~2種類の薬を処方した場合、あっという間にポリファーマシーとなってしまいます。各診療科の医師はどうしても自分が診るべき「疾患」に注目してしまい、本来診るべきは「患者さん」であることへの意識が薄れてしまいがちです。

 

それでは診療所の場合はどうでしょうか。診療所では先ほどの4つの疾患は一人の医師が診療することになります。もちろんそれぞれの疾患に対しての処方薬は、病院で複数の医師が診療する場合と大きくは変わらないわけですが、一人の医師が処方することによりポリファーマシーの有害事象を疑った際に、減薬などの調整が行いやすくなります。

 

以上よりポリファーマシー予防の観点からは、複数の病気を抱える患者さんの場合では、よほど専門性の高い病気がなければ、診療所などで一人の医師に診療してもらう方にメリットがあると考えます。

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