「死ぬほど大変な」実家じまいを経験したタレントの松本明子氏は、実家で両親の遺品整理をおこなった際、「親が元気なうちにもっと話しておけばよかった」と痛感した出来事を経験したといいます。自身の経験から「親が元気なうちにやっておくべきこと」について、松本氏が解説します。

残高たった1円の口座に振り回された出来事

親が元気なうちに「あとのこと」や「財産のこと」をもっと話しておけばよかったと痛感した出来事がありました。

 

母が亡くなってしばらくした頃、気が進まないまま実家で両親の遺品整理の真似事をしたときのことです。父親名義の高松にある銀行の預金通帳が1通見つかりました。ほとんど記帳した形跡がないので、口座の様子がわかりません。

 

そこで通帳に記された高松の銀行支店に問い合わせたところ、「口座の残額が1円あります。取りに来てください」と言うのです。

 

1円のために高松へ? 往復の飛行機代で6万円ですよ(苦笑)。 

 

「あのー、行かないといけないんでしょうか」

「そうです。お見えになるときは、これから申し上げる戸籍謄本などの書類を揃えてお持ちください」

 

それを聞いて、うわー、めんどくさい、と思いながら、言いました。

 

「そういうことでしたら、もうその1円はいりません。そちらの銀行さんに差し上げますので、高松まで行くのは勘弁してください」

「そう言われましても、この1円を取りに来ていただかないと」

「いや、もういりませんから」

 

電話をしながら、頭がくらくらしました(苦笑)。

 

決まりだから仕方がないのでしょうが、この残高1円問題の解決には何度も銀行とやり取りするなどして、結局、数年かかりました。最終的には所定の期間が過ぎれば、残高を放棄できるというので、それに従うことにしたのです。

1円に振り回されないために…いまからできること

それにしても残高1円の預金口座にここまで振り回されるとは思いもしませんでした。父はこの口座のことはすっかり忘れていたのでしょう。

 

もし父が元気なうちに、手元に残した財産の内訳をすべてわかるようにしておいてくれたら、またそうしてくれるように私から話せていたら、この口座のことも思い出してくれて、亡くなる前に解約するなどしかるべき対応ができたと思うのです。

 

そうした準備がないまま親が亡くなると、どこに通帳があるのかさえわからないし、通帳が見つかっても、今度は届印がどこにあるのか、どれなのか、あちこちひっくり返して探さないといけなくなります。

 

昔はいくらでも通帳が作れたので、私たちの親の世代は、いまの感覚では信じられないほど数多くの預貯金口座を持っている場合があります。旅行に行くたびに旅先で記念に通帳を作る人までいたのです。

 

ですから、親が元気なうちに生前整理に取り組む気になってもらうには、たとえばこんな話を振ってみるのもいいかもしれません。

 

「昔は旅行の記念によく旅先の郵便局で通帳を作ったりしたみたいだけど、お父さんやお母さんもやったの?」

「そう言えば、北海道の函館に行ったとき作ったな」

「九州の鹿児島でも作りましたよ」

「あれ、どうしたっけ?」

 

……などと案外、話が盛り上がるかも。

 

そうしたら、さりげなく、「口座に1円しか残っていなくても、あとで子どもが大変な目にあうらしいよ」と私の体験談でもうまいこと使ってみてください。

 

あと、私の両親が亡くなった当時は、まだ関係ありませんでしたが、これからはスマホやパソコンに残る写真や預金などのデジタル遺品やデジタル遺産が大きな問題になりそうです。ID・パスワードがわからないとログインできませんから。 

 

先日、ある新聞を読んでいたら、そうした重要な情報は、紙に書いておいて、その上に個人情報を保護するシールを貼り、普段は見えない状態にしておく。そして、いざというときに家族がわかるように通帳などと一緒に保管するのがいいとあり、なるほどと思いました。ご参考までに。

 

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※本連載は、松本明子氏の著書『実家じまい終わらせました! 大赤字を出した私が専門家とたどり着いた家とお墓のしまい方』(祥伝社)から一部を抜粋し、再編集したものです。

実家じまい終わらせました! 大赤字を出した私が専門家とたどり着いた家とお墓のしまい方

実家じまい終わらせました! 大赤字を出した私が専門家とたどり着いた家とお墓のしまい方

松本 明子

祥伝社

数十年前に建てたマイホーム。現在は子が独立し、故郷に親御さんだけが住み続けているという方がほとんどなのではないでしょうか。ゆくゆくは実家に住む人が誰もいなくなってしまうのは予想できるけれど、日々の忙しい生活でと…

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