デジタル・インフラは景気変動の波の影響を受けにくい
デジタル・インフラストラクチャーは、消費者、政府、企業から「ミッションクリティカル」であると認識されるようになりました。2035年までの業界の総設備投資額は、水道インフラ、鉄道、空港を上回ると予想されています。
デジタル・インフラストラクチャーの顧客需要は、経済的なショックの影響を比較的受けにくいことが予想されます。このことは、過去の景気後退期におけるCrown Castleの賃貸収入を振り返ることで証明されます(図表3)。同社のキャッシュフローは、AT&TやVerizonといった、投資適格テナントによって支えられています。
米国政府は、総額1.2兆ドルのインフラ投資・雇用法案のうち、650億ドルをデジタルサービスが受けられていない、またはサービスが制限されている米国コミュニティのデジタルデバイド(情報格差)の解消に充てることを決定しました。これにより、景気に左右されることなく、今後10年間において光ファイバー容量の大幅な拡大が見込まれます。
デジタル・インフラストラクチャーの所有者は、インフレや通貨切り下げなどの外的ショックから保護されるようなリース契約を結んでいます。マクロタワーの場合、これは現地の消費者物価指数や燃料価格への明示的な連動、あるいは単純に年間3%の固定賃料上昇を意味することもあります。
サプライチェーンのリソースがタイト化するなか、デジタル・インフラストラクチャーのデベロッパーはレンタル価格を引き上げています。
新興国でインフラ整備が急速に成長する可能性も
今後10年間で、デジタル・インフラストラクチャー投資が最も急速に成長するのは、新興国であると予想されます。これらの国々では、現在ほとんどのサービスが不足していながら、接続性とコンテンツ共有に対する、あくなき需要を持つ若い人口を抱えています。
若いインターネットユーザーは、遅い世代のブロードバンドやモバイル技術をスキップして、超高速の家庭用光ファイバーや4G/5Gの電話信号にアクセスができるようになったばかりであり、巨大な経済ポテンシャルを創出しています。
今後10年以上にわたって新興国のデジタル経済が発展していくなかで、私たちは、データセンター、マクロタワー、光ファイバーケーブルといったコアとなるサブセクターにおいて、ビジネスチャンスがあると考えています。
米国と中国のハイテク大手企業は、これらの市場に急速に参入しています。マイクロソフトは3月、プネ、ムンバイ、チェンナイにある拠点に加え、インドのハイデラバードでもクラウドサービスを提供する計画であると発表しました。
しかし、デジタル・インフラストラクチャー整備が遅れているため、自社で施設を開発するか、市内にすでに施設を持つSify Technologiesのような第三者業者からリースする必要があります。
Ciscoによると、インドのインターネット普及率は2017年の27%(3億5700万人)から2022年には60%(8億4000万人)に増加し、いまや中国(10億人)に次いで世界第2位、米国(3億人)の3倍近いインターネットユーザー数を有しています。
しかしながらCloudSceneによれば、インドのデータセンター数は米国の20分の1に過ぎません。 インドの人口が15億人に達し、インターネットの普及率が上昇するにつれ、大規模な投資を行わなければ、インフラ資産の不足は拡大することになるでしょう。
福澤 基哉
シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社
執行役員/プロダクト統括
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