政府・日銀は「為替介入」を実施 ~その効果について考える【ストラテジストが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●政府・日銀は22日にドル売り・円買いの為替介入を実施、その後は5円強ドル安・円高が進んだ。

●今回は米国の理解を得た上で単独介入か、ただ介入原資や政策の一貫性に関する問題は残る。

●円買い介入は金融引き締め要因、円安は構造的・複合的問題であるため、介入では解決できず。

政府・日銀は22日にドル売り・円買いの為替介入を実施、その後は5円強ドル安・円高が進んだ

政府・日銀は9月22日、1998年6月以来、約24年ぶりとなるドル売り・円買いの為替介入に踏み切りました。この日は午後3時半から日銀の黒田東彦総裁の記者会見が行われましたが、金融緩和維持の強い姿勢が確認されたことで、ドル円は午後4時頃に1ドル=145円90銭近くまでドル高・円安が進行しました(図表1)。為替介入はこれを受け、午後5時頃に実施された模様で、その後は140円35銭付近までドル安・円高が進みました。

 

 

なお、米財務省の広報担当者は同日、為替介入には参加していないとし、日米の協調介入でないことを明らかにしました。しかしながら、日本の行動は理解しているとも述べました。また、欧州中央銀行(ECB)の広報担当者も同日、為替市場で介入はしていないとコメントしました。これにより、今回の政府・日銀による為替介入は、日本単独によるものと推測されます。

今回は米国の理解を得た上で単独介入か、ただ介入原資や政策の一貫性に関する問題は残る

9月20日付レポートで、ドル売り・円買いの為替介入のハードルはかなり高いと指摘しました。その理由として、①ドル売り原資は限られており、為替介入で、かえって投機的なドル買い・円売りを誘発する恐れがあること、②高インフレの続く米国が、日本と協調介入を行う公算は小さく、日本の単独介入も安易に容認するとは思われないこと、③異次元緩和でのドル売り・円買い介入は、政策の一貫性に欠けること、を挙げました。

 

今回は、このうちの、②の一部、日本の単独介入について、米国の理解を得られたため、為替介入に踏み切ったと考えられますが、①と③の問題は残ります。①の原資は、「外国為替資金特別会計(外為特会)」に計上されている、外貨預け金11.5兆円(2021年3月31日時点)のうちのドル建て分です。報道によれば、今回の介入規模は「兆円単位」とのことですので、同規模の介入を継続することは困難と思われます。

円買い介入は金融引き締め要因、円安は構造的・複合的問題であるため、介入では解決できず

日銀の調査によると、日本の外国為替市場の1営業日あたり平均取引高は3,755億ドルです(図表2)。

 

 

このうちドル円のスポット取引高を推計すると544.6億ドルとなり、1ドル=143円で換算すると、約7.8兆円です。そのため、日本の外国為替市場における兆円単位の介入は、相当なインパクトとなりますが、やはり介入原資に限りがある以上、他の市場加者が介入に呼応してドル売り・円買いに動かなければ、効果の持続性は乏しくなります。

 

③について、ドル売り・円買い介入は、財務省が民間銀行から円を買うため、日銀当座預金の残高減少要因、金利上昇要因となります。日銀が異次元緩和のもとで残高減少分を補てんすれば、金利低下要因、円安要因となるため、介入効果は薄れます。円安は、「資源に大きく依存するなかでの資源高による貿易赤字の定着」、「賃金・物価が伸びないなかでの利上げの遅れ」など、構造的・複合的な問題に起因するもので、為替介入では解決できません。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『政府・日銀は「為替介入」を実施 ~その効果について考える【ストラテジストが解説】』を参照)。

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

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    三井住友DSアセットマネジメント株式会社 チーフマーケットストラテジスト

    旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)で為替トレーディング業務、市場調査業務に従事した後、米系銀行で個人投資家向けに株式・債券・為替などの市場動向とグローバル経済の調査・情報発信を担当。
    現在は、日米欧や新興国などの経済および金融市場の分析に携わり情報発信を行う。
    著書に「為替相場の分析手法」(東洋経済新報社、2012/09)など。
    CFA協会認定証券アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。

    著者紹介

    三井住友DSアセットマネジメントは、運用や調査経験豊富なプロフェッショナルを擁し、経済や金融市場について運用会社ならではの情報発信を行っています。幅広い投資家に良質な情報を伝えるべく、年間で約800本の金融市場・経済レポートの発行の他、YouTube等の動画、Twitterでの情報発信を行っています。

    著者紹介

    連載【市川雅浩・チーフマーケットストラテジスト】マーケットレポート/三井住友DSアセットマネジメント

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