四足歩行の動物は、脊柱がアーチ状の梁になっている
まず、四足歩行する動物の脊柱(各脊椎が連なった状態)は背面に緩やかなアーチ状形態(後弯)を呈し、4本の脚で支持されています。重い頭部の重量は前足部で主に支持されますので、脊柱にかかる負荷は軽く、体幹部の重量のみとなります。アーチ状の脊柱は梁として作用し、牛などのように比較的重い荷物を運んだりできるわけです。
脊柱背側の筋肉は走ったり、ジャンプしたりするために必要ですが、腹部の内臓は重力により脊椎から離れ、腹筋によって支持(ハンモック状態)されるため、腰椎の腹側の筋力は発達せず、欠如しています。つまり背筋のみで十分だったわけです。
しかし、人類は木から降りて草原で生活するうちに、より遠方の敵を観察するために頻繁に立ち上がる必要がありました。そこで、頭部、胸部、上肢を持ち上げるために体幹筋、特に腰椎の背筋が発達した結果、二足歩行が可能となりました。
この直立二足歩行への進化に伴って、脊柱は垂直化し、頭部と体幹と上肢の重量がすべて脊柱下端の腰椎にかかるようになり、脊柱は上半身を支える大黒柱に変化しました。さらに、脊柱下端の腰椎は前方に緩やかにカーブ(前弯)した結果、脊柱は胸椎の後方カーブと腰椎の前方カーブが組み合わさったS字状を呈するようになりました。
こうした変化の過程は、赤ちゃんの成長過程で観察されます。つまり、ハイハイ歩行までの脊柱はアーチ状ですが、座位、立位へと成長するに伴ってS字状カーブに移行します。まさに進化の再現ですね。
二足歩行でも「腰椎腹側筋」は欠如したまま…
一方、筋肉に関しては腰椎背側の筋肉は上述のために発達しましたが、腹側の筋肉は発達しなかったようです(もともとないから!)。つまり、腰椎の背筋のみで頭部・体幹・上肢の体重を支え、バランスをとらなければならなくなった訳です。例えるなら、ゆで卵を刺した箸を立てて、一本の指で支えるようなものです(2本の指なら簡単ですが)。
したがって、不安定性な脊柱の下端にある腰椎の背筋には非常に大きな負担がかかるため、腰痛等が起こりやすく、それが「腰痛は二足歩行の宿命」と言われる所以なのです。