(※画像はイメージです/PIXTA)

児童手当について、2022年10月給付分から、所得制限がさらに強化されます。しかし、これに対し、高額所得世帯をかえって優遇する結果になりかねず不公平ではないかという指摘があります。そこで、所得制限の内容がどのようなものか、どんな問題点があるのか、具体的なケースを交えながら解説します。

児童手当の所得制限は理不尽!?2つの問題点

児童手当の所得制限については、以前から、主に以下の2つの問題点が指摘されてきています。

 

1.所得制限自体が児童手当の制度趣旨に反する

2.世帯主の所得金額を基準とするのは公平性と合理性を欠く

 

それぞれについて解説します。

問題点1.所得制限自体が児童手当の趣旨に反する

第一に、所得制限が児童手当の制度趣旨に反するのではないかという問題があります。

 

すなわち、子育て支援という目的の必要性は、所得の大小に関係なくすべての世帯に当てはまるので、所得制限にはなじまないというものです。

 

実際、貧困家庭の子育ての援助に特化した制度としては、別途、学用品等の購入費用を援助する「就学援助」等が設けられています。

 

児童手当のような普遍的な目的をもつ制度について所得制限を設けると、所得制限を超えた世帯が子育て支援の対象から除かれるということになり、不公平・不平等の問題が発生せざるをえません。

 

他方、所得制限を設けない場合の顕著な不公平・不平等は、直ちには見出しがたいといえます。

 

所得の再分配や格差解消の問題は、児童手当という子育て支援を主眼とする制度の枠内ではなく、税制や社会保障制度によって解決すべきという考え方もありえます。

問題点2.世帯主の所得金額を基準とするのは公平性と合理性を欠く

第二に、仮に所得制限という制度の正当性・合理性が認められるとしても、世帯主の所得金額を基準とするのは不合理ではないかという指摘があります。

 

子育ては世帯単位で行うものです。共働きの夫婦と子どもの世帯の場合に、世帯主の所得のみをとらえて所得制限を行うというのは、実情に即しているといえるのか、疑問があります。

 

たとえば、家族構成が世帯主と配偶者、小学生の子2人の世帯で、以下の2つの異なるケースを比べてみましょう。

 

・ケース1:世帯主の年収が1,200万円、配偶者(扶養)の年収が103万円の世帯(世帯年収1,303万円)

・ケース2:世帯主と配偶者の年収が900万円ずつの世帯(世帯年収1,800万円)

 

まず、ケース1は、【図表2】の「所得制限限度額736万円・収入額の目安960万円」が適用されますが、所得制限を超えてしまうので、児童手当は受け取れません。これまでは特別給付を月5,000円受け取れましたが(【図表3】参照)、これも2022年10月からは廃止されます。

 

これに対し、ケース2は、【図表2】の「所得制限限度額698万円・収入額の目安917.8万円」が適用され、世帯主の年収が900万円なので所得制限内におさまっているため、児童手当を2名分、月額合計2万円受け取ることができます。

 

まったく同じ家族構成で、かつ、ケース2の世帯の方がケース1の世帯よりも世帯年収が高いにもかかわらず、ケース1では児童手当を受け取れず、ケース2では受け取れることになります。

 

これは明らかにバランスを欠いており、不公平といわざるをえません。

 

児童手当の所得制限がなぜ世帯ごとではなく、世帯主に着目して設けられたのか、必ずしも明らかではありません。

 

しかし、少なくとも現在、児童手当の制度が始まった1972年当時と比べ、夫婦共働き世帯が大幅に増加しており、世帯主に着目することが現状に即していないのは明らかです。

 

そもそもの児童手当の子育て支援という制度趣旨にかんがみれば、所得制限自体の合理性も含め、見直す余地が大きいといえます。

 

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