(※写真はイメージです/PIXTA)

世界を見渡してみても、日本人の現金保有率(貯蓄率)の高さは顕著です。日本では義務教育期間中にほとんど金融教育が行われないため、資産運用の知識が乏しい人が少なくありません。では、実際に資産を運用していくのに必要な知識には、どのようなものがあるでしょうか? NIKEのエアマックスを日本に流通させ、1年で約44億円を売り上げた中谷昌文氏が、アメリカにて実践で身につけた資産運用のノウハウを、著書『なぜ大富豪のサイフは空っぽなのか?』(ビジネス社)で、解説します。

欧米では子どもの頃から少額で投資をスタート

アメリカをはじめとする欧米諸国の中には、小さい子どもに株式投資を教えているところもあります。一方で、日本人の多くは、子どもの頃はもちろん、大人になっても株式投資について学ぶ機会がありません。そこで「株式投資とは何か」について、あらためて考えてみましょう。

 

そもそも株式とは「株式会社が資金を出資してくれた人に対して発行する証券」のことです。また、証券とは、財産法上の権利や義務が記載された紙のことです。もっとも現在は、そのほとんどが電子化されているため、実際に株券を手にしたことがある人は少数でしょう。

 

さて、そのような株式を会社が発行する理由は、事業を行うための資金が必要だからです。事業を行うには、事務所費や人件費、その他の雑費など、さまざまなお金が要ります。それを集めるために、株式を発行して売ることで、資金を得ているのです。

 

もちろん、自分の資産を使ったり、銀行などの金融機関から融資を受けたりする方法もあるのですが、それだけでは十分に資金を得られない可能性があります。また、その事業を保有したり携わったりする仕組みとして、株式の発行が便利だと考えられたのです。

 

株式会社の歴史は古く、1602年に設立されたオランダ東インド会社が起源とされています。当時、航海には多大なリスクがあり、場合によっては生きて帰ってこられないこともありました。まさに命がけの冒険です。

 

その冒険によって得られるもの(食料、資源、大陸発見など)は非常に大きいのですが、自分たちだけで航海の資金を準備するとなると、やはり限界があります。そこで、株式によって小口の資金を集め、造船や貿易などの事業が行われるようになりました。

 

その後、イギリスやアメリカで経済や金融の仕組みが発達・発展していくにつれて、株式はその中心となっていきました。そうした文化的な背景もあり、欧米では子どものうちから株や債券を購入するなど、投資をスタートするのです。

 

もっとも、社会人経験がない子どもは、会社や株式の具体的な仕組みなどはわかりません。そこで、よりシンプルに考えて、伸びそうだと思う企業に少額を投じてみるわけです。もちろんその原資は両親からもたらされるのですが、それもまた教育の一環です。

 

こうした視点を培うことは、あながち安易な方法とはいえません。事実、株式投資は「美人投票」とも表現されています。

 

著名な経済学者であるケインズは、投資の玄人が行う株式投資を「新聞投票で美人を選ぶような方法」と述べました。その意味するところは、経験者が行う株式投資でも、結局は人気のある銘柄が伸びていく、ということでしょう。

 

そうなると、選ぶべきなのは個々人の好みではなく、みんなが選びそうなものということになります。つまり株式投資とは、市場に参加している多くの人が値上がりする(成長する)と考えている銘柄を選ぶもの、ということです。

 

子どものときから「伸びると思う銘柄」を選ぶ習慣は、そのまま大人になっても役立ちます。リスクとリターンを加味しつつ養われた目利き力は、株式だけでなく、さまざまな金融商品の精査につながります。しかも、知識としてだけでなく経験として知っているため、彼らは自然に投資巧者へと成長していきます。

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本連載は、中谷昌文氏の著書『なぜ大富豪のサイフは空っぽなのか?』(ビジネス社)から一部を抜粋し、再構成したものです。

なぜ大富豪のサイフは空っぽなのか?

なぜ大富豪のサイフは空っぽなのか?

中谷 昌文

ビジネス社

世界の富裕層はどのように財産をつくり、子孫に伝えているのか。教師を経験した後、渡米して様々な経験を積んだ著者は、NIKEシューズと出合い、その魅力を日本に伝えた。そうした経験でつくった人脈と資産によって、海外の富裕…

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