●日経平均は年初からレンジ相場にあるが、厳しい市場環境を踏まえると、底堅い動きと評価できる。
●長期では依然上昇トレンドが継続中、過去にチャイナ・ショックや米中貿易摩擦での下げを支えた。
●コロナ・ショックで下値支持線を割り込んだが一時的、上昇トレンドのなか過度な下値警戒は不要。
日経平均は年初からレンジ相場にあるが、厳しい市場環境を踏まえると、底堅い動きと評価できる
日経平均株価は年初から足元まで、27,000円を中心に上下2,400円程度のレンジ内での推移が続いています。もう少し詳しくみると、1月5日に年初来高値の29,388円16銭をつけた後、下落に転じ、3月9日に年初来安値となる24,681円74銭をつけています(取引時間中、以下同じ)。以降、下値は徐々に切り上がりましたが、上値は8月17日に29,222円77銭をつけたものの、年初来高値の更新には至っていません。
今年は2月にロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始し、これを機に原油などの資源価格が急騰、世界的にインフレが深刻な問題となるなか、米連邦準備制度理事会(FRB)は3月に利上げを開始し、その後も大幅利上げを継続しています。ここまで上値の重い印象の日経平均株価ですが、このようなかなり厳しい市場環境を踏まえると、底堅い動きと評価できます。
長期では依然上昇トレンドが継続中、過去にチャイナ・ショックや米中貿易摩擦での下げを支えた
ここで、日経平均株価の現在の立ち位置について、長期的な観点から考えてみます。日経平均株価は、2013年5月高値と2018年1月高値を結んだ上値抵抗線と、2012年10月安値と2016年6月安値を結んだ下値支持線によって、上昇トレンドを形成しています【図表】。
足元の日経平均株価は、トレンドを形成する2本線の中にしっかりと入っていますので、依然として長期上昇トレンドを維持していると解釈できます。
このトレンド内で、日経平均株価を大きく押し下げた主な出来事としては、2015年8月の「チャイナ・ショック」や、2018年秋口の米中貿易摩擦問題の悪化、2020年春先の「コロナ・ショック」があります。日経平均株価は、チャイナ・ショックで2015年8月から2016年6月まで29.0%下落し、米中貿易摩擦問題の悪化で2018年10月から12月まで22.5%下落しましたが、下値支持線を大きく割り込むことはありませんでした。
コロナ・ショックで下値支持線を割り込んだが一時的、上昇トレンドのなか過度な下値警戒は不要
ただ、コロナ・ショックの際、日経平均株価は2020年1月から3月まで32.2%下落し、下値支持線を大幅に割り込みました。新型の未知のウイルスに対する先行き不透明感から、株式市場は一気にリスクオフ(回避)に傾きましたが、図表のローソク足をみると、2020年6月には下値支持線を回復しており、トレンドラインの割り込みは一時的なものにとどまりました。
以上を踏まえると、10年ほど続いているこの長期上昇トレンドは、相応に強いものと考えられます。なお、上値抵抗線と下値支持線は、9月末時点で32,200円、25,900円、12月末時点で32,650円、26,350円に位置しています。米国の物価動向や利上げペースについては、まだ見通しにくいところはありますが、日経平均株価の長期上昇トレンドは維持されており、あまり過度に下値を警戒する必要はないように思われます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『日経平均株価は依然として「長期上昇トレンド」を維持【ストラテジストが解説】』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト