(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●FRBによるQTは6月1日から始まり約3ヵ月が経過、ここまで計画対比での進捗状況を確認する。

●財務省証券の縮小は計画比8割強進捗、ただMBSの増加などで資産全体の進捗率は5割ほど。

●ただ当局説明などからほぼ計画通りか、9月から月間縮小上限額が倍増、物価抑制効果に注目。

FRBによるQTは6月1日から始まり約3ヵ月が経過、ここまで計画対比での進捗状況を確認する

米連邦準備制度理事会(FRB)による量的引き締め(QT)は6月1日から開始され、すでに約3ヵ月が経過しました。計画によると、当初3ヵ月の保有資産の縮小上限額は月475億ドルで、内訳は財務省証券が月300億ドル、政府機関債と住宅ローン担保証券(MBS)が月175億ドルとなっています。そこで今回のレポートでは、ここまでのQTの進捗状況を確認します。

 

なお、進捗状況は、FRBが公表している毎週水曜日時点におけるバランスシートの詳細データで把握することができます。QT開始前の5月25日時点の数字をみると、バランスシートの総額は8兆9,143億ドルでした。このうち保有有価証券の残高は8兆4,792億ドルで、内訳は財務省証券が5兆7,694億ドル、政府機関債が23億ドル、MBSが2兆7,074億ドルでした。

財務省証券の縮小は計画比8割強進捗、ただMBSの増加などで資産全体の進捗率は5割ほど

8月31日時点で、バランスシートの総額は8兆8,261億ドルとなり、このうち保有有価証券の残高は8兆4,066億ドルで、内訳は財務省証券が5兆6,950億ドル、政府機関債が23億ドル、MBSが2兆7,093億ドルとなりました。5月25日時点と比べると、バランスシートは882億ドル減、保有有価証券は726億ドル減となり、財務省証券は744億ドル減、政府機関債は変わらず、MBSは18億ドル増となりました(図表1)。

 

[図表1]FRBのバランスシート変化

 

前述の計画に基づけば、縮小の上限額は当初3ヵ月合計で、保有資産全体が1,425億ドル、財務省証券は900億ドル、政府機関債とMBSは525億ドルです。したがって、ここまでの進捗率は、保有資産全体で50.9%、財務省証券で82.7%となる一方、政府機関債の残高は変わらず、MBSの残高は逆に増えており、これらが保有資産全体の進捗率を押し下げる要因となっています。

ただ当局説明などからほぼ計画通りか、9月から月間縮小上限額が倍増、物価抑制効果に注目

なお、政府機関債とMBSについて、ニューヨーク連銀はホームページで、取引の決済と元本支払いのタイミングが異なるため、報告される保有額も変動することになる旨を説明しています。また、FRBのパウエル議長は7月27日、バランスシートの縮小は順調に進んでいると述べており、これらを踏まえると、実質的な保有資産の縮小は、おおむね計画通りと考えてよいように思われます。

 

保有資産の縮小上限額は、今月から月950億ドル(財務省証券が月600億ドル、政府機関債とMBSが月350億ドル)に倍増します。大幅な利上げ継続が見込まれるなか、QTによる量の引き締め効果が倍増することになるため、足元では米実質金利に上昇圧力が生じている様子がうかがえます(図表2)。株価には目先、やや厳しい環境となりますが、インフレ抑制につながれば、長期的には好ましい状況に向かうと思われます。

 

[図表2]米実質金利の推移

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『当初の3ヵ月が終了した「米量的引き締め」の進捗状況【ストラテジストが解説】』を参照)。

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

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