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再開業する施設がある一方、儚く消えゆく施設も…
再開業する施設がある一方、有意義に活用されないまま解体を待つ施設もあります。
◆JRA馬事公苑
「JRA馬事公苑」は東急田園都市線「桜新町」駅から徒歩約20分の場所にあります。この施設は日中戦争の勃発により中止となった1940年東京オリンピックの馬術選手育成のために開苑されました。
その後1964年開催の東京オリンピック、そして今回のオリ・パラにおいても馬術競技会場として使用されました。開苑から80年以上経つため、2016年から一時閉苑して架設観客席・照明等の再構築が行われました。大会終了後はこれらが解体・撤去され、緑溢れる市民公園として2023年に再開業する予定です。
現地の周囲を歩いてみると、馬術競技会場となった北側エリアを中心に高さ約3mの高い目隠しフェンスで覆われ、現地に貼り出されていた工程表によると、現在は改修工事・土工事・躯体工事・造成植栽工事が行われているようです。
工事車両ゲートの隙間から中を垣間見る限りでは工事はさほど進んでおらず、無観客開催のため一度も使用されなかった観客席はまだ原形を留めていました。
◆潮風公園
ゆりかもめ「台場」駅から徒歩約5分にある「潮風公園」は、東京港沿いに広がる水辺の公園です。対岸には天王洲アイルや品川シーサイドがあり、お台場に位置するものの住居表示は品川区になります。
ここがビーチバレー競技会場に決定し1万2,000人収容の架設観客席が建設されましたが、無観客開催となったため一度も使われることはありませんでした。大会終了後に観客席はすべて撤去され、現在は広大な円形の芝生広場になっています。
天気の良い休日の昼下がり、芝生上に寝転んで寛ぐカップルや、レジャーシートを広げてランチを楽しむファミリー、走り回ってはしゃぐ子どもたちの姿はありますが、熱戦が繰り広げられた痕跡はどこにも残っていません。
「レガシー」のはずが「令和版トマソン」に?
もともとは消えゆく予定であったものの、日本人選手の金メダル獲得をきっかけに解体を免れ、「オリンピック・レガシー」として残されることになった施設もあります。
◆有明アーバンスポーツパーク
ゆりかもめ「有明テニスの森」から徒歩約5分にある「有明アーバンスポーツパーク」は、スケートボード競技で堀米雄斗選手が初代金メダリストとなった場所です。本来この会場は解体予定でしたが、堀米選手の栄誉を称え聖地(レガシー)として残されることになったのです。
現地を訪れてみると、金メダルの聖地はワイヤーフェンスに囲まれた「立入禁止」エリアの奥地にありました。フェンスに掲げられた標識には「令和5年3月23日まで、区画道路13・15号線整備工事中」とあり、レガシーと同じ街区内で道路整備工事が進行中のようです。
フェンス越しに目を細めると、スケートボードのストリート・パーク競技が行われたと思しきコース板だけがポツンと取り残されているのが見えました。周囲は土むき出しの広大な工事現場で、ここがオリンピック・レガシーの地だとは誰も気づかないでしょう。
東京都の事業計画によると、有明アーバンスポーツパークは運営を民間企業に任せ2025年の開業を目指します。運営企業の選定はこれからで、同街区内の道路工事も進行中であることから、当面の間放置されることが予想されます。このままではレガシーではなく、正真正銘のトマソンになってしまうのではないでしょうか?
まとめ
一部解体された建物に残る「行先のない階段」や「宙に浮いたドア」など、そのままでは利用価値がないものの、なぜか芸術的に見えるモノ(不動産)を「トマソン」と呼びます。
2021年開催のオリ・パラで都市再開発が進み、街中でたくさんのトマソンが見られるようになりましたが、もしやオリ・パラ会場跡地にも? と疑問を持ち現地調査を行いました。調査の結果、解体予定施設がある一方、「有明アリーナ」など6つの施設で整備工事が行われ再開業(一部予定)しています。
しかしそのほとんどは現況赤字経営です。日本人選手の栄誉を称え、解体から一転し「オリンピック・レガシー(聖地)」として残される施設もありますが、運営計画は未定で放置状態になっています。この中から近い将来、正真正銘のトマソンが誕生してしまうのでは? と心配でなりません。