(※写真はイメージです/PIXTA)

公的年金では老後生活が支えられないことが明確となった現在、多くの人が資産形成に努めている。しかし、老後が迫りくるなか「貯蓄ゼロ」という人もいる。預金ゼロで老後を迎えると、どのような状況に陥ってしまうのか。数字から読み解いていく。

老後資金「夫婦で2,000万円」といわれたが…

公的年金のみで老後生活が賄えないことから、国はつみたてNISAやiDeCoといった資産形成を促す施策を用意するとともに、国民へ老後資金の準備を進めるよう呼び掛けている。

 

2019年の金融庁の報告書が発端となった「老後資金2,000万円問題」だが、それをきっかけに、多くの人が「2,000万円」を目標に掲げ、貯蓄にいそしんでいる。

 

「2,000万円」という数字の根拠は、2017年の総務省『家計調査』によるものだ。もっとも、根拠となる数字は毎年変化しており、最新の2021年調査では1,000万円となっている。

 

また、公益財団法人生命保険文化センター『令和元年度生活保障に関する調査』によると、夫婦が老後に最低限の生活を送るには月22万円、ゆとりある生活なら月36万円ほど必要という結果が出た。

 

2,000万円問題のときと同じ条件で試算するなら、老後30年の生活資金は、最低でも8,000万円、余裕のある暮らしをするなら1億3,000万円が必要で、年金分を差し引いた分を預貯金でまかなう必要があるのだ。

 

もっとも、持ち家なのか賃貸なのか、健康状態はどうなのかといった、個々人の事情によって、必要金額は大きく変わってくるが、「年金だけでは心許いため、不足があると感じるなら貯蓄でどうにかするしかない」という厳然たる事実は動かせない。

 

とはいえ、すべての世帯に共通する「これだけあれば安心」という金額は出せないし、出せたとしても現実的なものとはならないだろう。

老後の準備はおろか、日々の生活にカツカツな人たち

老後の資産形成が「日本国民全員に課せられた責務」となったいま、中年性大は血道をあげて資産形成に励んでいる。

 

金融広報中央委員会『令和3年 家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]』で、将来を見据えた預貯金含めた資産である金融資産を「持っている」と回答したのは78.0%、多くが年金生活に入っている60代では80%に達していることからも、それがわかる。

 

 

 

【年代別「金融資産」保有率】

 

20代:62.9%

30代:77.3%

40代:75.2%

50代:76.8%

60代:81.0%

70代:81.7%

 

出所:金融広報中央委員会『令和3年 家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]』より

 

また、その保有額だが、50代から60代にかけて平均値では1,200万円程度、中央値は600万円程度と、資産を増やしていることから、年金生活開始前にラストスパートをかけていることが想像できる。

 

【年代別「金融資産」保有額】

※数値:左が平均値、右が中央値

 

20代:344万円 / 201万円

30代:986万円 / 400万円

40代:1,235万円 / 531万円

50代:1,825万円 / 800万円

60代:3,014万円 / 1,400万円

70代:2,720万円 / 1,500万円


出所:金融広報中央委員会『令和3年 家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]』より


だがこの数字は「将来を見据えた預貯金含めた資産がある」と回答した人たちのものだ。生活に備えた預貯金を持たない、正真正銘の「貯蓄ゼロ」は、同調査では2.5%、40人に1人という結果だった。

 

老後に向けた資産形成を加速させるべき50代でも、4人に1人は「余裕がない」状況にあり、そのなかには「貯蓄ゼロ」「その日暮らし」という人も含まれる。

 

前出の総務省『家計調査』(2021年)では、高齢者無職の夫婦は、月々1万8,524円の赤字であり、不足分は貯蓄を取り崩して賄っている。貯蓄がゼロだとすれば、月々約2万円は、なんらかの形で切り詰めざるを得ない。

 

切り詰めるところをすべて切り詰めても、なお生活資金が足りない。そんな生活を送る高齢者は、今後増加する可能性が高い。年金生活を前に「貯蓄ゼロ」から脱却できなかった人たちは、行政に頼るしか方法がない。

 

このようなつらい老後生活を回避するためには、まずは「貯蓄ゼロ」から脱却するしかない。「貯金ゼロ」「その日暮らし」でしのいでいる現役世代がつらい老後生活を回避するには、まずはそんな生活を立て直し、貯金を作るところからスタートする必要があるだろう。

 

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