(※画像はイメージです/PIXTA)

2022年9月1日に財務省が公表した「法人企業統計調査」の結果によると、2021年度の日本企業の内部留保の額が516兆4,750億円と過去最高を記録しました(金融・保険業を除く全業種)。この調査結果についてどう考えるべきか、解説します。

内部留保とは何か

日本企業の内部留保の額が500兆円を超え、過去最高を記録したことを受けて「企業が内部留保を貯め込んでいるのが問題だ」「賃上げなどによってもっと従業員に還元すべきだ」などといった論調が見られます。しかし、そのような問題意識は核心をついているといえるでしょうか。

 

内部留保というと、内部にお金を貯め込んでいるイメージを喚起します。しかし、正確には「利益剰余金」といい、利益のなかから法人税等を支払い、株主等への配当を行ったあとに残った金額が、複数年にわたって積み重なった総額をさします。実際にその額が貯め込まれているのではなく、あくまでも計算上蓄積された数字です。

 

また、内部留保は、企業の資金調達の方法として極めて重要なものといえます。

 

すなわち、企業が資金を確保する方法は、大きく分けて以下の3つしかありません。

 

1. 内部留保(利益剰余金)

2. 投資家等からの出資(新株発行等)

3. 金融機関からの融資

 

このうち、中小企業の大部分を占めるオーナー企業にとっては、外部の投資家等からの出資を受けることは困難です。

 

また、金融機関からの融資も、財務状況が良好でなければ有利な条件で受けることができません。結局は、それまでにどれほど業績を積み上げてきたかにより大きく左右されます。内部留保はその重要な証です。

 

したがって、内部留保を積み上げることは、企業が資金を確保する方法としてきわめて重要だといえるのです。

内部留保は優良企業の目安の一つ?

このようにとらえると、内部留保の金額は、主に「創業からの年数の長さ」と、「各年度の利益の大きさ」の関係によって決まるといえます。ただし、これに加え、外部的事情の影響を受けることがあります。

 

すなわち、創業からの年数が長く、かつ、利益を順調に出し続けていれば、内部留保の額は大きくなります。したがって、内部留保の額が大きいことは、優良企業であることの目安の一つともいえます。専門的な言葉を使えば「自己資本比率が高い」ということになります。

 

ただし、内部留保の増加は、外部的事情によっても左右されることがあります。

 

たとえば、新型コロナウィルス禍の下で多くの企業が国や自治体から給付金を受け取っており、全体として利益を押し上げる方向にはたらきます。

 

また、昨今のような急激な円安の下では、国外に資産を保有している企業や、輸出により収益を得ている企業は、円安に振れるだけで、何もしなくても数字の上では内部留保の額が著しく増大する可能性があります。

 

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