重要なのは内部留保自体よりも資金の活用状況
以上のように、内部留保は企業が収益を上げてきた「過程」を示すものにすぎません。
重要なのはむしろ「結果」、すなわち内部留保を積み上げたあとどのように資金を有効活用したかです。
どういうことかというと、企業は、利益が出た場合、税金等の支払いや配当を行ったあと、残ったお金を、現状維持や将来の収益を得るための資金として活用します。必ずしも現預金として貯め込まれているとは限りません。
また、資金の活用方法は、必ずしも、直ちに経費に計上される人件費や福利厚生費だけとは限りません。
日常の資金繰りや、工場・機械設備等の設備投資のために使う場合もあります。その場合、お金は有効に活用されていますが、直ちには資産の減少を伴わないので、内部留保の額は減りません。
さらに、ここでも外部的事情の影響を考慮に入れなければなりません。
すなわち、企業経営には予期しないアクシデントが付きものです。たとえば、天災や大規模な自然災害や、コロナ禍、原材料費等の経費の高騰です。そういった事態に備える必要もあります。
そこで、企業が資金をどのように活用しているのか、あるいはしていないのか、それがどのような経営判断に基づくものか、確認する必要があります。
たとえば、「設備投資」について見ると、「法人企業統計調査」によれば、2019年度が-10.4%、2020年度が-5.0%だったのに対し、2021年度は+9.2%と増加に転じています。このことからすれば、一概に日本の企業が設備投資を怠っているとは言い切れません。
なお、設備投資がマイナスとなっている業種が5つだけあります。「食料品」「石油・石炭」「鉄鋼」「業務用機械」「電気機械」ですが、これらは原材料の価格の高騰等が影響している可能性が考えられます(図表参照)。
経済情勢の先行きが不透明なことや原材料が高騰していることなどを理由として、現時点での賃上げや大規模な設備投資を控えるという判断も、著しく不合理とまでは言えません。
結局、内部留保の増大が意味するところは?
ここまでお伝えしてきたように、内部留保は、企業ごとの過去の利益の蓄積であり、企業が長期的に利益を上げ続ければ必然的に増加していくものです。また、外部的事情によっても大きく左右されます。
したがって、現時点での企業の内部留保の額が過去最大となったからといって、そのことから直ちに一概に「こうしなければならない」という指針を導き出すことには慎重であるべきです。
特に、賃上げや設備投資の停滞といった問題については、内部留保の増大とは別の問題としてとらえ、その発生原因に着目した有効な対策を講じるべきです。
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