建設業許可の喪失は、ビジネス機会の喪失とイコール
もし人材育成が間に合わず、建設業許可を失ってしまった場合、500万円以上の仕事は受けず、許可が不要な小規模な工事だけで事業を続けていく方法もありますが、元請けであるゼネコンやスーパーゼネコンは、建設業許可を持っている会社から下請けを選ぶため、そもそも仕事が入らなくなる可能性があります。
建設業許可を必要としない仕事もあるとは思いますが、仕事自体の幅が非常に狭められるため、ビジネスの展開を考えると、やはり許可は必要だといえます。
また、建設業許可の認可には、ビジネス上の自由度だけでなく、会社の信頼性を担保するという意味もあります。
請負契約に関して「誠実性があること」「請負契約を履行するに足る財産的基礎又は金銭的信用を有していること」、そのほかにも「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」「暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者」といった、「欠格要件に該当しないこと」という要件を満たす必要があるため、建設業許可は、信頼に足る業者であることの証明になるのです。
もちろんこれは、大企業の下請けとしてだけでなく、個人の客による業者選びの際にも、「安心して頼める業者かどうか」の判断基準にもなります。
慢性化する人材不足…行政もいよいよ対策に着手
建設業界は以前より「職人が足りない」「若手が入らない」など、人材が不足がちな業界ではありました。しかし、最近はさらに状況が悪化し、人材不足が慢性化しています。
その問題を解消するべく、2020年10月の法改正で、事業承継や相続、合併などの際に建設業許可をそのまま承継できる制度が成立しました。
これまでは、事業承継などの際には、事業を譲り受けた側が、新規で建設業許可を申請しなければならなかったため、どうしても「許可の空白期間」が生まれたり、場合によっては許可を失ってしまったりすることがありました。
しかし、法改正によって、このような空白期間が生まれにくくなることから、国や役所でも、建設業特有の「事業承継の手間・難しさ」を改善しようとする動きが出ているのです。
上述した経営業務の管理責任者の許可の要件も、少しずつ緩和されたり、別のルールが追加されたりもしています。
人材不足が続く建設業界ですが、存続を目指すための改革が続いているのです。
根布 浩光
ムーブ行政書士事務所 代表行政書士