建設会社、たった1名の人材喪失で仕事の請負が不可能に!?…命運を握る「建設業許可」存続の高いハードル

 建設会社、たった1名の人材喪失で仕事の請負が不可能に!?…命運を握る「建設業許可」存続の高いハードル

いまの日本の建設業界では、急速なインフレ、終息しないコロナ禍によるサプライチェーンの寸断、そして深刻な人材不足から、廃業に追い込まれるケースが増えています。大切な会社を存続させるためには、経営者が留意すべき最も重要な対策があるのです。建設関連認可の分野に明るい、ムーブ行政書士事務所代表の根布浩光氏が解説します。

 

建設会社にとって何より重要な「建設業許可」の認定

かつては日本経済をけん引した建設業界も、バブル崩壊後は勢いを失い、その後、日本経済が持ち直し需要が増加しても、多くの会社が廃業したあとで、それに応えるだけの体力がないというのが実情です。ここ数年は、コロナ禍によるサプライチェーンの寸断、急速なインフレによる資材不足の影響も相まって、さらに厳しい状況が続いていますが、そもそも業界の根本的な問題に、恒常的な人材不足、そして建設業界特有の問題があります。

 

建設業界でそれなりの規模の仕事を請け負うには「建設業許可」を保有している必要があります。この建設業許可の喪失は、ビジネスの規模の縮小とイコールで、実際、業界で事業をたたむ決定的な原因のひとつでもあるのです。具体的には、「建築法上で軽微な建設工事」とされる500万円未満(場合によっては1500万円未満)の仕事しか受けられなくなります。

 

一人親方や家族経営等で、500万円以下の小規模な工事だけを行っている会社にはさほど関係ないのかもしれませんが、それなりの工事を手掛けている会社の場合、500万円以上の新規の仕事が受けられなくなると、一気に廃業の危機に陥る可能性が出てきます。そのため、失うと怖いのが建設業許可なのです。

 

建設業許可を失う大きな原因として「高齢化等による人材不足」が挙げられます。

 

建設業許可を受けるための要件として、「経営業務の管理責任者」と「専任技術者」を有することが含まれているため、これらの人材が不在となった場合、建設業許可の取り消し対象とされてしまいます。

 

たとえば、管理責任者として指定されていた代表が急死してしまった場合や、専任技術者を任されていた人材が突然辞めてしまった場合、後任がいなければ建設業許可が失われます。

該当の人材確保には「周到な対策」が不可欠に

このような事態を防ぐためにも、事前の対策が不可欠です。

 

とくに経営業務の管理責任者は、「建設業の経営経験を5年以上積んでいる」もしくは「管理責任者の補佐を6年以上経験している」等が証明できる人材でないとなれないので、後任の人材を早めに育成しておく必要があります。

 

そのことから筆者は、建設業許可を持っている会社の場合、後任候補の人材をあらかじめ取締役に据えておくことをおすすめしています。

 

決済権のない取締役でかまいませんので、まずは取締役として任命しておけば、経営業務の管理責任者の要件となる経験を積むことができます。そうすることで、万一のことがあっても建設業許可を失うことなく、会社は営業を続けることができます。

 

専任技術者も、所定学科の卒業+所定の実務経験、該当の学歴を持たない人材の場合は10年の実務経験、もしくは対象の資格を保有していることなどが要件となっています。経営業務の管理責任者ほどではありませんが、こちらも人材の確保が難しいため、事前に国家資格を取得しておく、あるいは人材を育成しておく、といった対策が不可欠なのです。

 

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