建設会社にとって「建設業許可」の取得は大問題
建設会社にとって「建設業許可」の取得は、今後のビジネスの幅を決定づける極めて重要なポイントです。建設業界でそれなりの規模の仕事を請け負うには「建設業許可」を保有している必要があるからです。
建設業法の目的、建設業許可を取得するメリット、建設業を取得しなくてもよい場面について見ていきましょう。
本来「建設業法」の目的は、不良業者の排除だった
建設業法の第一条には、下記の内容が定められています。
この法律は、建設業を営む者の資質の向上、建設工事の請負契約の適正化等を図ることによつて、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発達を促進し、もつて公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。
噛み砕いて説明しますと、良質な建設業者を育成し、発注者の保護、建設業界の健全な発達を促進し、結果として生活をよくしていきましょう、という内容です。
建設業者のなかには、残念ながら一部の不良業者も存在します。そういった不良業者を排除していくことが建設業者全体の信頼向上にもつながります。
業界では、不良業者を排除するため、許可制度を設けて建設業者を監督するという方針をを選択し、昭和24年、建設業法が制定されたのです。
建設業許可を取得すると、どんなメリットがあるのか
企業が建設業許可を取得することで、「建築法上で軽微な建設工事」以外も請け負うことができるようになります。それだけでなく、ほかにも経営上有利な影響が出てくるケースがあります。事業者によって差異はありますが、いくつか挙げていきます。
◆公共工事に参加するための経営事項審査を受けられる
国や地方公共団体が発注する公共工事を受注したい事業者は、経営事項審査を受ける必要があります。この経営事項審査を受けるには、建設業許可の取得が必須です。入札に参加したからといって簡単に公共工事が受注できるわけではありませんが、入口として、まずは経営事項審査を受け、総合評定値を取得しなくてはなりません。
◆技能実習制度や特定技能制度を利用することができる
建設業界は今後人材不足が進むと試算されており、働き手不足の解消の1つとして、特定技能という新しい在留資格が2019年頃からスタートし、話題にもなりました。
現在、新しく技能実習生や特定技能により働きたい外国人を受け入れる場合、建設業許可を取得していなくてはなりません。
技能実習制度や特定技能制度を新しく利用する場合は、建設業許可を取得していないと、外国人人材を受け入れることができません。これから外国人人材を従業員として迎えることを検討するなら、平行して建設業許可の取得できるか否か検討していくことをオススメします。
◆ゼネコンの下請けとして指名されやすくなる
近年ではコンプライアンス上、ゼネコンなど大手建設業者の下請けに入る場合、ゼネコンから建設業許可を持っていることを指定される事案が増えているようです。
また、公共工事だけでなく民間工事でも自社のアピールのため総合評定値を発注者に提出する事業者も存在するようです。様々な場面で建設業許可を取得していることが求められる、または有利になる場面が少しずつ増えてきています。
建設業許可なしで受注できる工事もあるが…
これまで建設業許可を取得するメリットや必要性を説明してきましたが、建設業に許可制度を導入しながらも、建設業許可がなくても工事ができる場合があります。
「許可がなくても工事ができる」と聞くと、なんのための許可制度なのかと疑問を覚えるかもしれませんが、建設業許可なしでできる工事には、一定の制限が設けられています。
ごく簡単に説明すると、建設業許可を取得していなくても工事を請け負うことができるのは、下記の2つに該当するものに限ります。
1件の工事の請負金額が、
●建築一式工事の場合、税込1,500万円以下の工事
●建築一式工事以外の場合、税込500万円以下の工事(軽微な工事)
ほかにも、自社が使用する建物を自社で施工する場合は建設業許可が不要になります。
すべての工事が建設業許可の記載対象に入らなかったのは、許可制度を設けることによる小規模零細建設業者への負担を考慮されたことが理由です。
発注者保護を掲げる一方、建設業許可取得の負担の大きさについても、国は認めているのです。
このことから、経営者はまず自社の状況を把握し、建設業許可の必要性について十分検討し、判断することが大切です。
建設業許可は、欲しいと思ったからといって、すぐ取得できるものではありません。筆者もこれまで、人的要件を満たせずに建設業許可が取得できない事業者のケースを多く見てきました。これから建設業許可の取得を検討する場合、まずは自社の事業計画を考えたううえで、先を見越した周到な準備が必要だといえます。
根布 浩光
ムーブ行政書士事務所 代表行政書士