(※写真はイメージです/PIXTA)

アパートオーナーにとって、売却や建て替えをおこなう際に避けて通れないのが「立退き交渉」です。足下をみて高額な立退料を迫ってくる入居者や、感情的になってくる入居者に対して、どのように交渉すべきでしょうか。不動産と相続を専門に取り扱う、山村暢彦弁護士が解説します。

立退料の相場観は「ない」

「立退料っていくら払えばいいんですか?」というのも、よくあるご質問です。

 

裁判例等を踏まえて「築●年の建物だと金●●●万円ぐらいだろう」というのは、個別の事案では説明できますが、明確な立退料の算定方法や相場観は「ない」というのが実際のところです。

 

法律の世界は、裁判例という裁判所が判断した「先例」によって解決していくという「先例主義」ですが、立退料に関しては、その当時の交渉状況や、建て替えの際に大家さん側が負担できる資金余力によって大きく幅が出ます。そのため、裁判例を分析して、金●●●円ぐらいと、具体的な事例なくお答えすることは非常に難しいのです。

 

他方、1つだけ明確にいえることは、入居者側に弁護士が介入した場合、間違いなく立退料額は大家さん側が考えていた立退料額よりも上昇します。

 

理由としては、入居者側に弁護士費用が発生するので、その分以上に上昇しないと解決に至らないという点と、弁護士が介入した以上、「裁判で問題になった立退料」を基準に交渉してくるため、一般的な相場よりも高額になってしまう点が挙げられます。

 

立退きトラブルはいたるところで発生していますが、「裁判による立退料」しか先例としての資料がないので、弁護士が介入した以上はどうしても「裁判相場での立退料」を提示されてしまいます。

 

まとめ…円満解決には「双方歩み寄り」を

大家業をやっている以上、建て替えや売却の場面では、「立退き問題」が生じることは避けられません。

 

そのため、その際に絶対に覚えておいて欲しいのは、自分の都合だけではなく、入居者側の心情にも配慮して交渉するということです。

 

また、立退料額自体には明確な答えがないものの、相手を怒らせて弁護士を介入されると、当初よりもオーナーにとって悪い結果になってしまうことがあります。

 

ただ、「弁護士を介入させたら立退料が増額するのであれば、交渉時入居者は必ず弁護士を入れてくるのでは?」と疑問を持つ方もいらっしゃるかと思いますが、弁護士を介入させると入居者側にも弁護士費用が発生しますので、簡単には弁護士を介入させることが難しいという側面もあります。

 

弁護士がいうと元も子もありませんが、立退きトラブルで弁護士が介入しなければならない場面になると双方負担が増えますので、できる限り相手の心情にも配慮し、穏便に話を進めることが円満解決の秘訣です。

 

 

山村 暢彦

山村法律事務所

代表弁護士 
 

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本記事は『アパート経営オンライン』内記事を一部抜粋、再編集したものです。

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