(※写真はイメージです/PIXTA)

歯の疾患は「口の中だけの問題」ではありません。たとえば歯周病は糖尿病、誤嚥性肺炎、心疾患など全身疾患に悪影響を及ぼすことが分かっています。このことから金子泰英氏(医療法人KANEKO DENTAL OFFICE 理事長・院長)は、医科と歯科が連携して患者の健康を考える体制を望んできました。しかし一方では、長年、医科歯科連携の難しさを感じてきたといいます。

「歯の治療は体の治療より優先順位が低い」という風潮

■「がん手術の前の口腔ケア」で合併症リスクが4分の1に減少するが…

近年、がんの治療時に口腔ケアが重要であることがだいぶ知られるようになってきました。がんの手術前に口腔ケアを行った場合と行わなかった場合を比較すると、行った場合は術後の合併症が4分の1に減少することが分かっています。

 

「静岡県立静岡がんセンター歯科口胚外科部長だった太田洋二郎医師ら厚生労働省の研究班のデータ」より作成
[図表1]口腔ケア介入による頭頸部再建手術の術後合併症発生率(単変量解析) 「静岡県立静岡がんセンター歯科口胚外科部長だった太田洋二郎医師ら厚生労働省の研究班のデータ」より作成

 

そのため、がんの手術が決まったら、まずは口腔ケアを行うことが推奨されていますが、「手術が先だ」という医師もまだ少なくありません。特に大学病院のような大きな組織だと、内科と口腔外科といった病院内での連携を取るのが難しく、口腔ケアは後回しになりがちです。

 

それを痛感したのは、私の義父が2015年に膵臓がんにかかったときでした。

 

手術が決まって私が医師に「口腔ケアはどうするのですか?」と聞くと、「急を要するので今回は手術が先です」と言われました。

 

一般の患者は医師にそう言われれば、素直に聞くのが普通だと思います。しかし義父の場合は、私が至急口腔ケアを行うことにし、手術日までブラッシング指導、歯周病菌の除菌を行い、家では念入りに歯磨き、パーフェクトペリオ(口腔内を殺菌できる次亜塩素酸電解水)でのうがいをしてもらいました。

 

手術は無事に成功し、歯周病菌を徹底排除したおかげか、術後のたんのからみもまったくありませんでした。経過良好で退院し、その後、転移防止のために抗がん剤を飲み始めました。私は今までの経験上、抗がん剤服用中に歯のトラブルがあるとどのようなことになるかを理解しているため、またがんの治療の妨げになるものは徹底的に排除するため、術後に義父の歯の治療に取り掛かりました。

 

そのときの治療内容は以下のとおりです。

 

●徹底した歯周病菌の除菌、歯石除去

●免疫を下げる、自然治癒をさまたげるアマルガム、銀歯の撤去

●根尖病巣の治療(歯の根の先にできる膿)

●抜歯

 

とにかく歯周病菌の除菌は頻繁に行いました。

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予防弱者 知らぬ間に不健康に陥る日本人

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金子 泰英

幻冬舎メディアコンサルティング

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