香港在住・国際金融ストラテジストの長谷川建一氏(Wells Global Asset Management Limited, CEO)が「香港・中国市場の今」を解説していきます。
景気減速懸念が強まるなか中国は主要政策金利引き下げ
中国人民銀行は22日、金融機関の貸出金利の目安となる最優遇貸出金利であるローンプライムレート(LPR)を発表し、1年物について今年1月以来7ヵ月ぶりに5bpsの引き下げ、3.65%に設定した。
各銀行はこれに基づいて貸出金利を決定するため、今回の引き下げは企業への融資活動を増やし、経済活動を促す方針とみられる。
住宅ローン金利の指標となる5年物については今年5月以来続いて、15bpsの引き下げ。先週発表した同銀の1年物中期貸出制度(MLF)に続いて金利の引き下げとなった。
中国各地では新型コロナウイルスの感染が再拡大しており、移動制限措置が強化に傾くなど景気減速懸念が強まっている。
特に不動産市場については、ダウンサイドリスクが意識されている。今年に入って、人民銀は積極的な金融緩和を促す姿勢を示しているが、インフレ率が上昇する中で、金融緩和姿勢を明確にしづらい。緩和が中途半端では、一段の景気悪化を防ぐには十分ではない可能性も指摘され、なにより企業も消費者も投資や消費に、慎重にならざるを得ない。
秋ごろに開かれる中国共産党大会を前に、習近平政権は中国経済の減速に対する危機感を強め、金融政策に関して企業に対する融資支援を強化する姿勢を強めている。今回の結果を受けて積極的な金融緩和は継続としてみて取れるが、実体経済にとって景気支援策の一歩になるか注目となるだろう。
長谷川 建一
Wells Global Asset Management Limited, CEO/国際金融ストラテジスト<在香港>
Wells Global Asset Management Limited, CEO最高経営責任者
国際金融ストラテジスト <在香港>
京都大学法学部卒・神戸大学経営学修士(MBA)
シティバンク東京支店及びニューヨーク本店にて、資金証券部門の要職を歴任後、シティバンク日本のリテール部門やプライベートバンク部門で活躍。 2004年末に東京三菱銀行(現:MUFG 銀行)に移籍し、リテール部門のマーケティング責任者、2009年からはアジアでのウエルスマネージメント事業を率いて2010年には香港で同事業を立ち上げた。その後、独立して、2015年には香港金融管理局からRestricted Bank Licence(限定銀行ライセンス)を取得し、Nippon Wealth Limitedを創業、資産運用を専業とする銀行のトップとして経営を担った。
2021年5月には再び独立し、Wells Global Asset Management Limitedを設立。香港証券先物委員会から証券業務・運用業務のライセンスを取得して、アジアの発展を見据えた富裕層向けサービスを提供している。(香港SFC CE No. BIS009)
世界の投資機会や投資戦略、資産防衛にも精通。個人公式サイトなどを通じて、金融・投資啓蒙にも取り組んでいる。
● 個人公式サイト
「HASEKENHK.com」(https://hasekenhk.com/)
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