じつは「所得格差大国」の日本
「日本の貧困化」が話題にされるようになって久しい。これは日本人の体感的なものではなく、世界各国との数値の比較で、明確になっている事実である。OECDの資料から、最新データである2019年の統計で各国の貧困率※を見ると、日本は主要42ヵ国中12位(日本のデータは2018年のもの)となっている。
※ 相対的貧困率。等価可処分所得が貧困ライン以下の世帯に属する国民の比率で、貧困ラインは全国民の等価可処分所得平均/中央値の50%。
【主要国「貧困率」トップ10】
出所:OECD(2019年)
1位 南アフリカ 27.7%(2017年時)
2位 ブラジル 21.5%(2016年時)
3位 コスタリカ 19.9%
4位 米国 18.0%
5位 ブルガリア 17.6%
6位 イスラエル 17.3%
7位 ルーマニア 17.0%
8位 チリ 16.5%(2017年時)
9位 韓国 16.3%
10位 ラトビア 16.2%
……
12位 日本 15.7%(2018年時)
一方、日本の貧困率を年ごとに追うと、2000年代に入ってから数値の悪化が見て取れる。貧富の差はじわじわと広がり、リーマンショック、東日本大震災後の2012年は16.1%に達した。
【日本の貧困率の推移】
出所:OECD
2018年 :15.7%
2015年 :15.7%
2012年 :16.1%
2009年 :16.0%
2006年 :15.7%
2003年 :14.9%
2000年 :15.3%
1997年 :13.7%
所得の差が大きくなった理由としてしばしば指摘されるのが、2004年の派遣法の改正だが、派遣法ができたのは1985年である。ただ、当時の対象業種は13だけで、1999年の改正で原則自由化され、2004年にはこれまで禁止されていた製造業や医療業務への派遣が解禁され、基本的に無制限となった。この流れを見ると、2000年代の貧困率の上昇と一致しているといっていいかもしれない。
しかしながら、そもそもの根本的な問題は、派遣の対象業種が無制限となったことではなく、派遣社員等の時給が低いことにあるといえるだろう。
OECDの統計では、世界主要31ヵ国の最低賃金水準(フルタイム従業員の平均賃金を100とした場合の法定最低賃金の比率)を見た場合、日本は45.17%で27位となっている。賃金水準からして格差が大きい以上、所得格差が開くの当然だ。
就職がままならなかった氷河期世代の「その後」
最低賃金で仕事に従事しているのは、多くは非正規の人たちだろう。正社員と非正社員の格差が注目されたのは、就職氷河期世代からかもしれない。
就職氷河期はバブル崩壊後、1993年~2005年に卒業した、1971年~1981年生まれの、2022年時点で41歳から51歳を迎える人たちを指す。この時期、新卒求人倍率が下がり続け、15~24歳の完全失業率は2003年に10%超となり、就職氷河期はピークを迎えた。
その後の雇用環境改善で正規社員になれた人はよかったが、なかには一度も正規社員になったことがない人もいる。いわゆる「不本意正規」は20代~40代で25%前後、50代で31.7%に達するという。
【不本意正規の割合】
出所:内閣府『満足度・生活の質に関する調査報告書 2022』
20代:24.7%
30代:25.3%
40代:25.1%
50代:31.7%
60代:19.7%
政府は氷河期世代の支援についていくつもプランを提案しているが、すべての就職氷河期世代が救われるわけではないだろう。恐らくは、氷河期世代の中でも若い人たちに偏るのではないか。年齢は管理職と同世代であるにもかかわらず、正規社員になった経験がなく、キャリアも積めていない人材を企業側が積極的に採用するというのであれば、相当な優遇制度がない限り考えにくい。
正規社員の推定年収は522万円、平均給与は月35万円、手取り27万円。
非正規社員の推定年収は300万円、平均給与は月23万円、手取り18万円。
(厚生労働省『令和3年賃金構造基本統計調査』より)
日々の生活を送るのに精一杯な状況なら、結婚も、老後資金の形成もままならないではないか。氷河期世代の支援が不足した結果、ひきこもりの増加や出生数の減少という問題をはじめ、企業ではマネジメント層の不足も発生している。
しかし、いまから氷河期世代のサポートに注力しても、解決できる問題は限られてしまう。また、当の本人たちからは諦めの声も聞こえてくる。サポートする側も、される側も、「できる範囲でどうにかする」しかないということか。
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