「経営から退きたくない」会社にしがみつく経営者
5つめの要因としては、社長の「経営から退きたくない、生涯現役でいたい」という想いがあります。社長は自分で引退の時期を決められるので、生涯現役でいることも可能です。自分が現役で居続けるなら事業承継は必要ないため、どんどん先延ばしになってしまいます。
高齢になっても現役社長で居続けてしまう人には、3つのタイプがあります。
1つめは、「仕事が好きだからずっと続けたい」と思っているタイプです。これは意地悪な言い方をすると、「仕事以外に生きがいがない」ということの裏返しです。仕事以外に楽しいことがあれば「そろそろ引退して自分の時間が欲しい」となるはずです。
2つめは、仕事以外の生きがいにも通じることですが、「引退後のビジョンがない」というタイプです。仕事一筋できた人は仕事を辞めたあとの自分をイメージしにくく、「社長でなくなった自分は何者なんだろう……」考えてしまいがちです。仕事が好きというよりは「肩書がないと不安」という気持ちが大きいのかもしれません。
3つめは、社員たちが頼りなくて会社を任せるのが心配なタイプです。カリスマ性があって自分一代で会社を大きくしてきたような社長ほど「自分がいなくては会社は立ち行かない」と思いがちです。「自分の信用で取引しているから、引退すると取引が切られてしまうのではないか」「この仕事は自分にしかできない」「社員たちは未熟だから見てあげないといけない」と思ってしまう気持ちがあります。社長にしてみれば社員への思いやりなのですが、それが社員たちの自発的な成長を妨げている可能性が大きいのです。
本当は1人で仕事ができるくらい後継者が育っているのに、心配だからと手や口を出すことで本人のやる気や自信をなくしてしまい、独り立ちを遅らせているケースを多く見受けます。
阿部 忠
ホッカイエムアイシー株式会社会長
ユーホープ株式会社代表取締役
埼玉県経営品質協議会顧問
中国江西省萍郷衛生職業学院客員教授
埼玉キワニスクラブ顧問
エコステージ経営評価委員
日本賢人会議所会員