“ほかにない”から生き残る…日本の「ガラパゴス企業」
ひろ:それで思い出したのは、昭和の終わりくらいに「商社って未来がないよね」って言われていたことなんです。商社というのは日本独自のシステムで「メーカーが自社で仕入れをすれば商社の存在意義はなくなる」と言われ続けていましたが、令和になった今でも業種別で見たときに商社はトップレベルの利益を上げているんです。
成毛:それは、日本にゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーといった投資銀行がない理由と重なりますよね。商社は投資銀行の役割を担っていて、しかもキャピタルゲイン(売買利益)だけでなく、商流を整えて売り上げも上げている。
ひろ:そう考えると、日本の商社ってめっちゃ優秀ですね。投資銀行もやりつつ、商流もきちんと整えて、売り上げもちゃんと上げる。
成毛:しかも総合商社は、海外の鉱山から国内のコンビニチェーンまで幅広く扱っていますからね。バランスシートの中のアセット(資産)が異常にデカい商売なので、ほかの国はなかなかまねできません。
ひろ:「日本式でほかに例がないからうまくいかない」と言われていた商売が「ほかにないから」生き残ったわけですね。
成毛:日本が特殊な状況だったことも影響していますよね。ガラパゴスも捨てたもんじゃないです(笑)。
AIにビビる前に…見直すべき日本独自の「謎ルール」
ひろ:すると、今後、日本発の世界的なITサービスは厳しいかもしれないですね。すでにIT系は世界中で出そろっちゃってますから。ただ、農作物なんかは狙い目だと思うんですが。
成毛:ええ、かなりイケるでしょうね。特に付加価値の高いものはチャンスがあります。
ひろ:海外に住んでいて思うのは、日本の農作物は本当に質がいいんですよ。糖度は高いし、サイズもきちんと整っている。
成毛:東京五輪で来日したソフトボールのアメリカ代表監督が「福島の桃はデリシャス」 と言って6個も食べたということが話題になってましたよね。そういう超高級フルーツが、パリやニューヨークで売れるようになれば大儲けできますよ。
ひろ:でも、せっかく日本人が品種改良しても、韓国でシャインマスカットやイチゴが無断栽培されたりしていて、もったいないですよね。あるいは、ヨーロッパで「和牛」として売られているものがオーストラリア産だったりしますし。ブランド管理をちゃんとしていないせいで、他国にどんどん持っていかれてます。
成毛:それこそフランスに学ぶべきですよね。「シャンパン」と名乗るには、産地がシャンパーニュ地方であることはもちろん、栽培方法や製造過程の規定をすべてクリアしないといけない。それくらい厳格なルールを作るべきです。
ひろ:日本はむしろ逆を行っていますからね。老舗の「まるや八丁味噌」が、木桶で2年以上熟成させる伝統製法で684年続いてきた「八丁味噌」の名称を守ろうとした結果、農水省に「八丁味噌」を名乗ることを禁止されそうですから。んで、農水省はステンレス桶で3ヵ月の即席熟成させたものを「八丁味噌」と名乗れるようにしている。アホなんじゃないかと。
成毛:おかしな話ですね。
ひろ:日本って、正しいことを声高に言ったとしても、各々の事情を勘案して妥協しがち。んで、それを「大人の結論の出し方」だと思っていたりするじゃないですか。
成毛:そうですね。
ひろ:日本にとって国際競争力のある分野も、日本独特の謎ルールで潰されてしまう。AIやロボットにビビる前にもっと見直すべきことがあると思いますけどね。
成毛 眞
書評サイト「HONZ」
代表
ひろゆき
実業家/インフルエンサー
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