(※写真はイメージです/PIXTA)

日本は世界的にも長寿国として周知されています。しかし、「平均寿命」と、平均寿命から寝たきりや認知症など介護状態の期間を差し引いた「健康寿命」の開き、つまり「要介護状態で暮らす期間の長さ」が問題視されています。なぜこのようなことが起こるのでしょうか。先進各国の状況と比較しながら見ていきます。

公的な保険制度があるドイツの予防意識

欧米で予防医学が浸透しているのは、何も治療費が高いという理由だけではありません。

 

もう一つ例に挙げると、医療先進国であるドイツは日本と同じく国民皆保険の国であり、ドイツに住む人たちは全員医療保険に入らなければなりません。誰もが等しく医療を受けられるため、日本と同じく「病気になったら治す」という意識があってもおかしくありませんが、現実は異なります。ドイツでは「クア(療養)」という医療制度を取り入れ、国策として予防医学に取り組んでいるのです。

 

古来、ヨーロッパでは「ナチュロパシー(自然療法)」という予防医学が親しまれてきました。これは人の手が加わらない自然要素を取り入れたセラピーや、薬用植物や野菜の栄養素などを体に取り込む食事療法、また、食事、運動、娯楽、睡眠など、日常生活の行為を利用する規律療法などを総称します。そして、治療、療養のための場所を「クアオルト」といい、場所や施設を利用するには健康保険制度が適用されるのです。

 

現在は治療以外でも健康づくりとして活用されており、少し体調が悪い、なんとなくだるいといった理由でもクアオルトを訪れる人が多くいます。国民のなかに「病気になる前に治す」という意識が深く根づいているのです。

知らず知らずのうちに予防弱者となっている

一方日本はというと、世界有数の医療先進国でありながら予防医学の浸透は遅れています。アメリカと異なり、国民皆保険制度があることで治療してくれる病院に頼ることが多くなり、自分で病気を未然に防ぐという意識が薄くなるのです。

 

「私は運動もしているし、食事にも気をつけている、たばこも吸わない」と健康維持に自信がある人も、予防医療の存在は知らなかったり、無関心だったりすることが多いように感じます。これは主に日本の保険制度に問題があるのですが、実は日本の医療も予防治療は非常に進化しており、健康寿命の延伸を大きく左右する要素になっています。例えば、遺伝子検査によるがんリスクの分析やアレルギー検査が可能となり、検査結果を基に生活習慣を変えることで、がんのリスクを軽減したり、アレルギーの発症を回避したりできるようになりました。

 

抗酸化力や免疫力を高める高濃度ビタミンC点滴や、オーダーメイドの医療用サプリメントの処方といった予防医療を行うクリニックも増えています。しかし、それらは自由診療となるため広く認知はされていません。予防をしているつもりでも、十分な予防になっていない。日本人の多くは、知らず知らずのうちに「予防弱者」になっているのです。

 

※本連載は、金子泰英氏の著書『予防弱者 知らぬ間に不健康に陥る日本人』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

予防弱者 知らぬ間に不健康に陥る日本人

予防弱者 知らぬ間に不健康に陥る日本人

金子 泰英

幻冬舎メディアコンサルティング

「病気になったら治す」では、気づかぬうちに病魔が進行していることも…。 病気は「治す」時代から「予防する」時代へ! 医療技術の進歩がめざましい今、欧米を中心とした先進国では「予防医学」が着目されるようになって…

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