(※画像はイメージです/PIXTA)

近年、建設需要の増加により、業界は好景気の明るい見通しです。しかし、これが中小規模の建設会社にとって追い風になるかは疑問です。大手と中小間で利益格差が生じ、逆風に転じる可能性を十分に秘めているからです。原価管理システムの開発・提供をしている三國浩明氏が、生き残りをかけて、さまざまな見直し・改革が必要な建設会社に必須の「原価管理術」を解説します。

「5%売上アップ」と「1%支出ダウン」は同価値

原価管理の目的を明確にしたら、次はどのように原価管理を行うのかを考えていきます。

 

実行予算を立て、原価実績と比較をするのが基本的な流れです。

 

原価管理を行うにあたり、工事にかかる原価を集計しなくてはいけません。具体的には「材料費」「労務費」「外注費」「経費」の4つに分類し、工事ごとに各項目にどれくらいのコストがかかっているのかを確認します。

 

どの建設会社も1年に1度はこうした原価を集計し、決算や税務申告を行っているはずですが、1年に1度では不足です。

 

原価に無駄があったとしても、改善するまでに時間がかかり過ぎてしまうため、まずは月に1度できれば毎週といったように、できるだけ頻度高く原価集計を行うことが大切です。

 

原価管理のプロセスは家計簿を作ることに似ています。きちんと月々の支出を集計しなければ予算以内に収まっていたのかが分かりません。1ヵ月ごとに予算と実際の支出を比べて、改善すべき点は改善していく必要があるのです。

 

このように予算を立てず集計もせずにいると、まとまったお金を貯めるのは難しいものです。10年後どころか、いつになっても希望を叶えることはできません。原価管理も基本的な考え方はこれと同じです。

 

会社の利益を上げるには、売上を得るだけではなく売上に見合った支出に抑える必要があります。

 

つい売上アップに目が行きがちですが売上アップは簡単なものではないため、支出をコントロールしたほうが効果的なのです。

 

例えば1,000万円の受注を見込み、これに対して100万円の粗利益を確保することを目指すとします。そうすると、かけられる原価は900万円です。この900万円を「材料費」「労務費」「外注費」「現場経費」の4つに分けて実行予算を立てるのです。

 

そしていざ工事がスタートしたら、実行予算との差異をチェックしていき、できる限り原価が実行予算を超えないようにコントロールします。

 

これが原価管理の基本的なフローです。

 

原価管理によって無駄を省いていけば、効率的に利益を上げることができます。原価を改善することがいかに効果的かという点については、図表1が参考になります。

 

1000万円赤字の会社が売上5%アップした場合と、原価1%ダウンした 場合の比較。どちらの方法でも1000万円の黒字となる。原価1%ダウン のほうが取り組みやすい。
[図表1]売上改善と原価改善の比較 1,000万円赤字の会社が売上5%アップした場合と、原価1%ダウンした
場合の比較。どちらの方法でも1,000万円の黒字となる。原価1%ダウン
のほうが取り組みやすい。

 

営業利益1,000万円を獲得するために、売上を上げる場合と原価を改善する場合とを比較したものです。

 

このケースでは、原価率を1%だけ下げた場合も、売上を5%アップした場合も、同じく営業利益が2,000万円増え、1,000万円となっています。

 

さて、どちらの方法で皆さんは利益を増やしますか?

 

多くの経営者は、原価率を1%下げるほうを選びます。

 

売上を5%上げる可能性と原価率を1%下げる可能性を比べれば、原価率を1%下げるほうが簡単であるのはいうまでもありません。

 

売上を上げるための対策はすでに行われていることがほとんどで、新たな対策を打ったとしてもそれによってすぐに受注増加につながるのはまれです。しかし原価にアプローチすれば直接的に利益改善につながるため、会社の利益が出ないときは原価に目を向けるべきなのです。

 

三國 浩明

株式会社建設ドットウェブ 代表取締役

一般社団法人原価管理研究会 代表理事

利益を生み出す建設業のための原価管理術

利益を生み出す建設業のための原価管理術

三國 浩明

幻冬舎メディアコンサルティング

大手電器メーカーのコンピューター販売部門に30年間務めるなかで、建設会社への原価管理システム供給の必要性と将来性を感じ、起業。業界導入実績ナンバーワンを記録した、原価管理システムを提供している著者が、長いキャリア…

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