(※写真はイメージです/PIXTA)

老後資産の形成の重要性が声高に叫ばれているが、必要なお金を貯蓄できている実感はあるだろうか。ここでは、厚生労働省年金局発表『令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』等に基づき、国民の懐事情を解説していく。

定年退職後、自営業に切り替えた男性「しんどい…」

現在、年金を受け取れるのは原則65歳からだが、繰上げ受給と繰下げ受給についての論議も活発化している。

 

ビジネス系の出版社で、退職するまで書籍出版部の編集長だった65歳のMさん(男性・既婚/仮名)も、老後不安は大きいという。現在の貯金は2200万円で、東京郊外のマンションのローンは完済した。5歳年下の妻はフリーのブックデザイナーだが、近年は仕事がめっきり減っている。子ども2人は社会人となって独立した。

 

年金は、できる限り繰り下げて受取額を大きくしたいと思いつつ、葛藤もある。

 

「勤め先の給料は悪くありませんでしたが、想定外だったのが、息子が2人とも私立の理系の大学と大学院に進学したことです。相当な教育費がかかりました。いまある貯金の2200万円のうち、半分は私の父親からの相続です。では、これを元手に老後が安定するほど資産を増やせるのかというと、私には難しいと感じます。だから、働くしかない」

 

「勤務先を退職して、いまは自営業で仕事を続けています。好きな仕事なのでその点は幸せですが、だからといってこのままいつまで働き続けられるのか…。万一私や妻に健康問題が生じたら、状況は一変するでしょう」

 

「子どもの結婚資金? 申し訳ないけれど、もうこれ以上出してやれないですよ。教育をつけてやったのだから〈あとは自分でどうにかしてくれ〉と思っています。正直、もうしんどい。でも、親が迷惑をかけるわけにはいかないので、それだけは必死ですよ…」

 

厚労省は「高齢者や女性が働きやすい社会」を作ることで「経済を活性化させる」としている。高齢者や女性が働ける社会を形成しつつ、日本経済をさらに改善することが、公的年金の状況改善にもつながるということだろう。

国は「70歳までの就業確保」を目指しているが…

2021年4月1日より改正高年齢者雇用安定法が施行された。企業は雇用する労働者について、現行法で定められている65歳までの雇用確保義務に加え、70歳までの就業確保措置が努力義務となっている。だが、あくまでも「努力義務」に過ぎないことから、実態は推して知るべしといったところだろう。

 

一方の労働者は「70歳を過ぎてもまだ働くのか…」と、暗澹たる気持ちになってしまうのではないか。

 

このような状況を回避するためにも、国民には自助努力が不可欠なのだ。

 

資産形成の手段として、株、投資信託、不動産投資や各種保険といった様々な商品があるが、大やけどのリスクはもちろん、やる意味を考えこんでしまうほど増えないもの、そもそも高齢になってから始めることに無理があるものなど、選択や運用には商品への正しい理解や慎重さが求められる。

 

自身の老後のため「適切なお金の知識」を持つことからスタートすべきといえるだろう。

 

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※本記事のインタビューではプライバシーを考慮し、一部内容を変更しています。

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