前回は、事業承継の際、息子や娘婿を容易に後継者にしてはならない理由を説明しました。今回は、従業員承継やM&Aという選択肢の概要について見ていきます。

自社のスタッフを後継者にするメリットとは?

オーナー社長の息子や娘に適当な後継者がどうしても見つからない場合、一つの考え方として、娘婿といった直系以外の親族、例えば甥などに事業を継いでもらうという道があります。

 

この場合、その甥っ子がオーナー社長の経営する会社で働いており才覚を認められているか、あるいは稀なケースとして独自に事業を行うなどしていて経営のイロハがわかっているといったことが条件になるでしょう。また、赤の他人である自社のスタッフの中から後継者候補を探し、その人に会社を継いでもらうという選択肢もあります。

 

このように、他社などの第三者ではなく、非同族を含めた自社に関係するスタッフの中から後継者を見出す事業承継の方法をMBOと呼びます。MBOのメリットとしては、外部の人材や文化が入ってこないことから、いままでの体制や会社のカルチャーを維持しやすいということが挙げられます。

M&Aなら企業の活性化・競争力のアップも期待できる

第三者に株式や事業を譲渡するM&Aでは、買い手となる会社が以降の経営を担っていくことになります。そのため、いわゆる社風や日々の業務の流れ、販売ノルマといったあらゆる点で、買い手の会社が培ってきた文化が入り込んできます。

 

人は一般に慣れ親しんだ環境が変化することを嫌ったり戸惑ったりします。現場の従業員はもちろん、売り手となるオーナー社長本人も、「長年経営してきた会社やその従業員をきっちりと導いてくれるだろうか?」と不安になるものなのです。

 

後述するように、そのような新たな風や血が入ってくることで、買収された中小企業が活性化され、また買い手の会社のブランド力などが加わることで競争力のアップにつながる例は多いです。けれども、そのことに思いが至らないばかりに、外部の人材や文化が入ってくることに抵抗を感じる人が多いのも事実です。

 

MBOが首尾よくいけば、前オーナー社長に代わって見知った新社長が就任するだけで、周囲の仲間なども昨日までと同じで環境はほとんど変わりません。一種のクローズドな環境でビジネスがうまく回っていたような会社では、MBOのメリットは十分にあるといえるでしょう。とはいえ、MBOには困難もつきまといます。

本連載は、2013年9月20日刊行の書籍『会社を息子に継がせるな』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

会社を息子に継がせるな

会社を息子に継がせるな

畠 嘉伸

幻冬舎メディアコンサルティング

現在、9割の中小企業経営者が後継者不在という問題を抱えています。息子がいない、いても“家業"に興味を示さない、あるいはオーナー社長が手塩にかけてきた会社を任せられるほどの才気がない。だからといって、廃業を選んでし…

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