多くの中小企業の経営者が抱える悩みとして「後継者の不在」があります。本連載では、身内が最適な後継者とは限らない理由を見ていきます。

事業承継の成功には入念な準備と確認が欠かせない

息子さんや娘婿に会社を継がせてよいものかどうか、という相談をよく受けます。いろいろなケースを見てきましたが、まさに千差万別です。息子さんに継ぐ気はあっても客観的に見て才気がもう一つということもあれば、十分に資質がありそうな息子さんが継ぐ気を示さないこともあります。

 

また、二代目として十分やっていけそうな才能はあるものの、気質が激しかったり切れ者過ぎたりして特に地方の和を重んじる中小企業の経営には向かないのではと思えるようなケースも稀にあります。

 

誤解を恐れずにいえば、才気が足りなければ二代目の資質としては厳しいですが、切れ者過ぎても難しいという側面があると感じています。また、いろんな会社の事業承継を見てきた中では、「息子がこんな風だったとは!」という声もよく耳にします。男親と息子は意外と口を利かないものです。そのため、二代目として疑問に思っていたが継がせて大正解という声もあれば、逆に、アイツに任せて失敗だったという指摘もあります。

 

いずれにせよ、事業承継には入念な準備や確認が必要です。オーナー社長自身の体調が思わしくなくなった、経営への意欲が薄れてきた、そんなタイミングから後継問題を考え始めるのでは遅過ぎます。

 

例えば、社長の突然の死によって会社経営の経験がない妻や子どもが相続でオーナーとなることで、生前のようなスムーズな会社経営ができなくなることもあります。スタッフの心が離れてしまったりして、最悪の場合、会社は倒産し従業員は路頭に迷ってしまいます。オーナー社長であるならば、そんな最悪のシナリオもあるのだと肝に銘じておくべきでしょう。

事業承継の手法によって事前の「対策も異なる

また、事業承継の手法によって、来るべき世代交代の日までになすべきことも変わってきます。

 

例えば、息子さんなど同族の誰かに相続させるのが前提なら、自社株の評価額は低いほどよいということになります。なぜなら、オーナー社長から息子さんなどに株式を譲渡(相続)するという形が一般的なため、株価が低いほうが次期社長の相続税の負担を減らすことができるからです。

 

逆に、M&Aなどで第三者への譲渡を考えるなら、いうまでもなく自社株の評価額は高ければ高いほどよいことになります。

 

そのため、オーナー社長の役員報酬を今後数年は下げたほうがよいのか、会社で保有している高級車やゴルフ会員権、不動産などは処分するほうがよいのか、あるいはオーナー社長が個人として会社から買い取るほうがよいのか、はたまた相続対策を視野に、内部留保していた資産を会社名義の不動産に替えておいたほうがよいのか・・・。目指す「出口」によって、それまでの戦略もまた異なってくるのです。

本連載は、2013年9月20日刊行の書籍『会社を息子に継がせるな』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

会社を息子に継がせるな

会社を息子に継がせるな

畠 嘉伸

幻冬舎メディアコンサルティング

現在、9割の中小企業経営者が後継者不在という問題を抱えています。息子がいない、いても“家業"に興味を示さない、あるいはオーナー社長が手塩にかけてきた会社を任せられるほどの才気がない。だからといって、廃業を選んでし…

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