(※写真はイメージです/PIXTA)

近年、日本ではM&Aの件数が増加していて、そのなかでも中小企業を対象にした、いわゆる「スモールM&A」の件数増加が顕著です。 中小企業の多くは、企業で事業承継問題や後継者問題は、喫緊の課題となっています。 スモールM&Aは、中小企業が抱えるこれらの課題の解決策として、特に注目されています。株式会社M&Aナビ社長の瀧田雄介氏が著書『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)で解説します。

M&Aプラットフォームの特徴は低コスト

先ほど述べたように、フルサービスを提供する大手M&A仲介会社がサポートするのは、売上高1億円以上で仲介手数料も1000万円以上が珍しくない、中規模以上のM&A案件です。

 

資金に乏しい中小企業は利用することができず、経済産業省によると、2025年までに後継者未定の中小企業約127万社のうち、約60万社が黒字廃業する恐れがあります。こうした状況で、存続が危ぶまれる企業が低コストでM&Aを実施することができるサービスとして誕生したのが、M&Aプラットフォームでした。

 

最大の特徴は「低コスト」で利用できることです。もちろん利用するサービスによって異なりますが、ある会社が2000万円の案件を買収したとして、手数料は40万〜200万円程度です。これなら、資金に限られる中小企業でも使うことができるのではないでしょうか。

 

こうした、低コストのサービスが提供できるのは、デジタルトランスフォーメーション(DX)によりM&Aプロセスを効率化し、提供サービスを厳選したM&Aプラットフォームならではでしょう。

 

瀧田雄介著『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)より。
瀧田雄介著『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)より。

 

■売り手・買い手ともに登録者は増加傾向盛り上がり続ける中小M&A市場

 

なお、先述したようにM&Aプラットフォームのコストは各社により異なり、サービス利用料、成約手数料などを設けているケースが見られます。前者は無料、後者は最低報酬が数十万円というところもあるので、小さな案件になるとコストを抑えることが可能です。

 

基本的には買い手から案件成約時に手数料を徴収するビジネスモデルが多いようです。売り手は無料ないし、それに近い水準で利用できるとなれば、登録を促すことができるからでしょう。

 

加えて、既存の業界構造に一石を投じたいという姿勢も見受けられます。手数料方式の一般的なM&Aサービスは無理な営業を生みやすく、売り手と買い手の双方から手数料を徴収する事業者も少なくありません。これは明らかに利益相反行為であり、国は改革の必要性を訴えているほどです。

 

また、手数料だけではなく着手金や月間報酬など、さまざまな形で売り手・買い手から手数料を得られることからM&Aビジネスは収益性が高いと見られ、法的な規制もないことから近年は新規参入が相次いでいます。これにより事業者の質にバラツキが出ているのも大きな課題となっています。

 

さらに問題なのは、M&Aアドバイザーからすると、売り手はその会社を売却すると関係性は終わりますが、買い手は何度も会社を買ってくれる可能性があるので、どうしても買い手に寄りそった事業承継が進みがちです。それにより、M&A仲介会社も手数料を得られます。

 

反対に、着手金は受け取ったものの、なかなか買い手が付かない会社はうま味がなく、放置される恐れもあります。当然ながら、売れなければ手数料が舞い込まないからです。

 

このように、売り手・買い手から手数料を徴収するビジネスモデルではM&A市場は活性化しないという考えから、買い手から手数料を得る仕組みにするM&Aプラットフォームが目立ちます。もちろん、デジタルトランスフォーメーション(DX)による省人化・省力化も無関係ではありません。

 

こういった、メリットもあってか、M&Aプラットフォームの登録者数は売り手・買い手・専門家(売り手のファイナンシャルアドバイザー)のすべてが増加しています。安定したマッチング環境が実現しようとしているのです。

 

瀧田雄介著『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)より。
瀧田雄介著『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)より。

 

瀧田雄介
株式会社M&Aナビ 代表取締役社長

 

 

※本連載は、瀧田雄介氏の著書『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)より一部を抜粋・再編集したものです。

中小企業向け 会社を守る事業承継

中小企業向け 会社を守る事業承継

瀧田 雄介

アルク

後継者がいなくても大丈夫!大事に育ててきた会社を100年先へつなぐ、これからの時代の「事業承継」を明らかにします。 日本経済を支える全国の中小企業は約419万社。そして今、その経営者の高齢化が心配されています。2025年…

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