建物の寿命と人の健康を脅かす床下のトラブル
ポイント⑦ 床下の水漏れは大問題
床下の水漏れは、建売住宅のトラブルの代表例のひとつです。家の1階部分には、床下点検口や収納庫がありますので、ここから床下の状況を確認することができます。床下収納庫の場合は、ふたを開けて、はめ込まれている収納庫を外します。特別な工具は必要ありません。
次に、床下を見るのですが、その前にやるべきことがあります。細かいことですが、上着の胸ポケットを確かめておきましょう。床下をのぞき込んだ際に、転げ落ちるようなものは入っていないでしょうか。携帯電話やペンなどは、ポケットから必ず出しておいてください。
それでは、いよいよ床下へ頭を入れてのぞき込んでください。懐中電灯を持参していると、奥まで確認できるのでおすすめです。ここでいちばん多いトラブルが、水漏れです。チェックすべきは、次の点になります。
◦床下は、水漏れしていないか
◦湿気を感じないか
◦カビ臭さを感じないか
建売住宅は、注文住宅にくらべて工期が短く、1棟当たり2カ月程度の突貫工事で建てられている場合が多くあります。突貫工事で建てられることによる弊害は少なくありません。基礎工事の段階で雨が降ると、本来はしっかりと乾燥したことを確認して先に進みますが、工期が限られている場合はそれを待てません。
注文住宅の場合は時間をかけて建てますから、自然に乾燥していく時間がありますが、建売住宅の場合はその時間がないのです。乾燥を待たずに工事を続行していくと、濡れた基礎の上に家が建つこともあります。基礎のコンクリートに水が残っていないか、または、湿気からカビを発生させていないか、自分の目と鼻をフル稼働させて、確認してください。
実際に私が診断を行った物件でも、床下を開けると水が溜まっていてプールのような状態になっていたことがありました。排水管の接続部がきちんとつながっていなかったのが理由です。ここまでひどい例はめったにありませんが、少しでも漏れていると、じわじわと建物の寿命と私たちの健康に悪い影響を与えていきます。
物件引渡し前に「木材の含有水分率」を計測すべき理由
湿気を含んだ状態で建築が進むと、もうひとつ問題があります。木は水分を含みますから、通常の状態でも、梅雨時と冬の乾燥時とでは、含有水分量が大きく変わります。通常は15%以下が正常で、梅雨時に20%、乾燥時に3%ぐらいまで動く幅はありますが、この範囲であれば適当な含有水分量といえるでしょう。
ところが、濡れた状態を放置して、必要以上に湿気を帯びたままで工事が進むと、床下に湿気がこもった状態が継続します。これが徐々に乾燥すると、水分を含んでふくらんだ木が乾燥してやせていきます。これによって、施工時にはなかった隙間が生じてしまいます。床を踏んだ際にきゅっきゅっと床鳴りがしたり、きしんだりする場合には、床下の乾燥がきちんと行われているかを、細かくチェックしたほうがいいでしょう。
家を検討する時期によって、重点的にチェックする箇所は変わります。梅雨時なら床下、中でも基礎のコンクリート部分を念入りに見てください。冬の乾燥している時期には、すべてが収縮していますから、どこに隙間があるか、空き具合はどうかを細かく見るようにしましょう。
万一、床下の水漏れがあった場合でも、適切に乾燥してもらえば購入自体に問題はありません。ただし、きちんと乾燥されたかを確認するためにも、引き渡し前に必ず木部の含水率を計測して数値的に判断する必要があります。
私が行う住宅診断では、床下で水漏れが起きていないかを見て、カビ臭さを確かめることに加えて、含水率測定器を使って入念なチェックを行います。床下の木の部分に測定器の針を刺すと、含水率を数値で見ることができます。何も問題のない家の場合は、乾燥している冬の時期で0~3%。夏でも20%程度です。
しかし、床下が濡れて湿気がこもった状況だと、これを大きく上回る数値を示します。その場合は、施工業者があらためて乾燥させなければならないレベルだということになります。
一部だけの軽度な水濡れであれば、2~3日程度で乾燥します。床下全体の水濡れであれば、1週間は乾燥させる必要があります。契約する前に発見した場合は、できれば他の物件を選んだほうが無難です。