(※写真はイメージです/PIXTA)

アダム・スミスは「経済のことは、神の見えざる手に任せよう」といい、マルクスは「貧富の拡大を防ぐため、経済は政府が管理すべき」といいました。「経済格差をどこまで容認するか」という論点はありますが、とても難しい問題ですね。メガバンカーから大学教授に転身した経験を持つ経済評論家の塚崎公義氏が解説します。※本記事は『大学の常識は、世間の非常識』(祥伝社)の内容の一部を紹介したものです。

政府による経済への「手出し・口出し」は悪影響!?

経済学を作ったのは、アダム・スミスという人ですが、彼の言葉で最も有名なのは「神の見えざる手」というものです。これは、「神様の手は見えないけれども、神様にお任せしておけば経済のことはうまくいくので、王様は経済のことに手出し口出ししないでください」ということですね。

 

もちろん、例外もありますから、本当に政府が経済にまったく関与しないと問題が生じるわけですが、大原則としては政府の手出し口出しは悪影響を与えることのほうが多い、というのは、いまでも経済学の最も基本的な考え方となっています。

モノの価格は「需要と供給が一致する水準」に着地する

イモを売りたい農家が5人いるとします。3人は市場の近くに住んでいるので、1個100円でも売りたいと考えています。1人は少し遠くに住んでいるので、200円なら売りたいと考えています。もう1人は遠くに住んでいるので、300円でないと売りたくない、と考えています。

 

イモを買いたい人が5人いるとします。3人はとても空腹なので、1個300円でも買いたいと思っています。1人は少し空腹なので、1個200円でも買いたいと思っています。1人はあまり空腹ではないけれども、1個100円なら買いたいと思っています。

 

10人が市場に集まって取引をすると、何が起きるでしょうか。ちなみに、取引できるイモの量は1人1個だけだとします。

 

1個200円ならば、4組のペアが出来て、平和です。遠くに住んでいる人は売りに来ず、あまり空腹でない人は買いませんが、それ以外の人は取引できるでしょう。

 

1個100円ならば、買いたい人が5人いて、売りたい人が3人しかいないので、買いたいけれども買えていない人が「私なら101円で買うから、他の人に売らずに私に売ってください」「私なら102円で買うから…」という具合に値段が上がっていき、1個200円になるまで値上がりが続きます。

 

1個300円ならば、売りたい人が「私なら299円で売りますから、他の人から買わずに私から買ってください」という具合に値段が下がっていき、やはり1個200円になるまで続きます。

 

神様に任せておくと、イモの値段は1個200円になるわけですね。「売りたい人の人数と買いたい人の人数が同じになるように値段が決まる」わけです。1人1個という制限がなくても、「売り注文の数と買い注文の数が同じになるように値段が決まる」といえばいいでしょう。

 

経済学では、売り注文を供給、買い注文を需要、値段を価格と呼ぶので、「需要と供給が一致する水準に価格が決まる」ということになります。

 

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