(※写真はイメージです/PIXTA)

アダム・スミスは「経済のことは、神の見えざる手に任せよう」といい、マルクスは「貧富の拡大を防ぐため、経済は政府が管理すべき」といいました。「経済格差をどこまで容認するか」という論点はありますが、とても難しい問題ですね。メガバンカーから大学教授に転身した経験を持つ経済評論家の塚崎公義氏が解説します。※本記事は『大学の常識は、世間の非常識』(祥伝社)の内容の一部を紹介したものです。

「イモを安くしろ!」王様の命令で起こる、困ったこと

心の優しい王様が、「貧乏人でもイモが食えるように、1個100円にしろ」と命令したとします。何が起きるでしょうか。

 

1つは、少し遠くに住んでいる農家が「それなら、市場まで売りに行かずに、イモはブタの餌にしよう」と考えてしまうことです。人間が食べるはずだったイモをブタが食べてしまうわけですね。

 

もう1つの困ったことは、空腹の人がイモにありつけるとは限らないことです。王様の命令前は、空腹の人は全員がイモにありついていましたが、王様の命令後は、運のいい3人がイモにありつき、運の悪い2人がイモにありつけない、ということになるわけです。

 

強欲な王様の命令だけでなく、心優しい王様の命令も、人々を苦しめるわけですね。やはり、神の見えざる手は素晴らしいです(笑)。

神に任せよ…されば、ほしいものが店にたくさん並ぶ!

もうひとつ、神様に任せると素晴らしいことがあります。たとえばあるとき、有名人が「私はイモを食べて痩せました!」と発言したことで、みんながイモを食べたいと思うようになったとします。

 

300円でもイモを買いたい人が増えると、イモの値段が300円になり、遠くの農家もイモを売りにくるようになるため、人々の食べられるイモの量が増えます。

 

イモの人気がさらに高まると、高くてもイモを買いたいという人が増えて、それを見た農家の中には「来年はコメを作らずにイモを作ろう」というところが出てくるでしょう。そうしてイモを作る農家が増えれば、イモを食べられる人がさらに増えるかもしれません。

 

人々がイモを食べたいと思うと、神様がイモを売る人を増やしてくれる、というわけですね。

 

王様は、イモを食べたい人が増えたことを知ることができないかもしれませんし、知ることができたとしても遠くの農家に市場まで売りに来させたり、コメ農家にイモを作らせたりする命令をするのは大変です。それより、神様に任せておいたほうが遥かに楽でうまくいく、というわけです。

 

今回は以上です。なお、本稿は拙著『大学の常識は、世間の非常識』の内容の一部をご紹介したものであり、すべて筆者の個人的な見解です。

 

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経済評論家・元大学教授
塚崎 公義

 

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