年前半のアジア・オセアニアリート市場は調整
■2022年前半のアジア・オセアニアのリート市場は、世界の中央銀行が金融引き締めを加速したことに伴い金利が急上昇したことや、先行きの景気後退が意識され、不動産市況の悪化懸念が強まったことから調整しました。
■現地通貨ベースでみたアジア・パシフィック・リート指数(除く日本)の年初来騰落率(6月末時点)は▲15.3%、シンガポールは▲2.7%、香港は▲6.0%、オーストラリアは▲23.1%と、大幅な利上げが嫌気されたオーストラリアを中心に下落しました。
■一方、2022年前半は円安が大幅に進行したため、円ベースでみた年初来騰落率は、現地通貨ベースに対し大きく改善しています。アジア・パシフィック・リート指数(除く日本)は▲4.4%、シンガポールは+11.3%、香港は+10.1%、オーストラリアは▲14.2%と、シンガポールや香港は為替効果のプラス寄与で2桁の上昇となりました。
経済は正常化へ向かっている
■金融市場で景気の先行き懸念が警戒されるなかでも、コロナ禍からの需要回復による経済正常化への動きは着実に進展しています。
■シンガポールではワクチン接種を条件にすべての国と地域から隔離なしでの渡航が認められたため、同国へのビジネス・観光目的の来訪者数が急回復しています。チャンギ空港の利用客数は今年4月に1.9百万人と、前年同月比10倍以上に増加しており、今後も一段の拡大が見込まれます。
■新型コロナ感染拡大後の人の移動をGoogle Mobilityによって確認すると、オーストラリアでは、年明けにオミクロン型によって感染が拡大したものの、比較的短期間で収まり、改善傾向を示しています。小売店・娯楽施設の人の移動もコロナ以前に戻りつつあります。
■人の移動の活発化と共に、雇用が堅調に推移していることが追い風となり、5月の名目小売売上高は市場予想を上回る増加となりました。物価が上昇していることを勘案しても堅調な増加であり、コロナ禍からの経済正常化の流れに変わりはないとみられます。
アジア・オセアニアリートは底堅い推移へ
■アジア・オセアニアのリート市場は、経済正常化に伴い底堅く推移する見通しです。
■シンガポール市場は、ビジネス・観光目的の来訪者数が急増していることから、景気の回復とともに堅調な推移を想定します。
■香港市場は、主要銘柄の業績に対する安心感が高いほか、継続的な自己株式の取得方針を打ち出していることが支えとなり、底堅い展開を見込みます。
■オーストラリア市場も持ち直しの動きを予想します。世界的なインフレ圧力はしばらく続くとみられるものの、長期金利の上昇には一服感があり、利上げの加速は概ね織り込まれたと考えられます。オーストラリア経済は堅調であり、今後はリートの業績に目が向かい、反発すると予想します。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
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