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老後資金は十分でも高齢になっても働き続けたいワケ
さて、話を「在職老齢年金」に戻すと、「いつまで働くか」も、「いつから受給するか」同様、悩ましい問題です。「若いころはこう考えていたが、いろいろ人生経験を積んで実際にこの歳になってみたら、あれこれ考えるところもある」とおっしゃる方も少なくありません。
内閣府『令和2年版高齢社会白書(全体版)』によると、全国の60歳以上で収入のある仕事をしている人の割合は、平成28(2016)年は男女全体で32.9%、令和元(2019)年で37.3%。5歳ごとに区切った60歳以上のほとんどの世代で増加傾向にあるそうです。
では、仕事をしている理由について尋ねると、「収入がほしいから」(45.4%)が最も多く、男性の60~64歳層で特に高かった(65.1%)そうです。逆に、現在収入のある仕事をしていない人に、今後収入を得られる仕事につきたいかを聞いたところ、「仕事につくつもりはない」が9割近い87.0%でトップだったとか。
総務省『家計調査報告(貯蓄・負債編)-2021年(令和3年)平均結果-(二人以上の世帯)』によると、60~69歳世帯の1世帯当たり純貯蓄額(貯蓄現在高からローンなどの負債現在高を差し引いた額)は2,323万円。70歳以上世帯の純貯蓄額は2,232万円となっています。
この純貯蓄額は平均値ですから、60歳以上のすべての2人家庭がそうとはいえませんが、一時注目を集めた「老後2,000万円問題」と引き比べると、なんとか暮らしていける貯蓄額といえるでしょう。では、老後資金も十分なのに、なぜ働きたいと思うのでしょうか。
もちろん、会社に経営手腕やノウハウが必要とされている場合もあるでしょう。さきほどの内閣府の白書における、収入のある仕事をしている人への「仕事する理由」のアンケートでは、2番目に多かったのが「働くのは体によいから、老化を防ぐから」(23.5%)。3番目が「仕事そのものが面白いから、自分の知識・能力を生かせるから」(21.9%)だったそうです。
「自分の知識・能力を生かす」ためなら、会社から給与を得て働くスタイルに限りません。もちろん、会社から給与を得ていても、厚生年金に加入していなければ老齢年金の受給額には影響しません。
ただし、一定要件の短時間労働ではない場合、70歳未満で厚生年金の適用事業所に勤務していれば、厚生年金保険に加入しなければならないことになっています。
在職老齢年金は、厚生年金保険加入者に適用される制度です。逆にいえば、フリーランスなどの個人事業主が加入するのは国民年金ですから、在職老齢年金は適用されません。したがって、厚生年金に加入していた間の老齢年金を受け取りながらフリーランスとして収入を得るようになっても、年金は減額されません。
これまでの知識や経験を活かして、講演会やセミナーの講師をしたり、業界誌に執筆したり……という働き方もあるでしょう。あるいは、経営もしくは勤務していた会社と業務委託契約を結ぶという方法もあります。ただし、収入額によっては確定申告が必要となります。
老後のライフプランも、相続税対策も、ケース・バイ・ケースです。配偶者やお子さんがいるかいないかでも異なります。決断がつかない場合は、ファイナンシャルプランナーや相続税専門の税理士といった、その道の専門家に相談するのも1つの選択肢です。
岡野雄志
岡野相続税理士法人
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