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遺族に課税の可能性も…「受給年齢引き上げ」のワナ
仮に、「年金を減額されても給与を得て働く」を選択し、その途中で亡くなったとします。会社から退職金が支給され、相続人である遺族が受け取ったとしましょう。退職金は相続税の課税対象です。ただし、500万円×法定相続人数を限度額とする非課税枠があります。
厚生年金の適用事業所では、企業が社員に年金を支給する企業年金を採用していることもあります。年金受給期間に被保険者が亡くなり、遺族に未支給分が支払われる場合、その企業年金は相続税の課税対象となります。また、個人年金の未支給分も相続税の課税対象です。
一方、厚生年金や国民年金を受給している途中で亡くなると、遺族に遺族年金が支給されます。遺族年金には、原則として相続税も、所得税も課税されません。ただし、老齢年金の未支給金があり、遺族が受け取ると、相続税は非課税ですが、一時所得として課税されます。
年金制度改正で、「老齢年金繰り下げ受給年齢」の限度が75歳まで引き上げられました。年金の受給開始年齢を後ろ倒しすると、その月数に応じて受給金額は増えます。しかし、タイミングによっては遺族に所得税が課せられたり、税額が増したりするので、注意が必要です。
前述のように、老齢年金の未支給金を遺族が受け取ると、所得税の対象になります。たとえば、受給開始年齢を上限の75歳に設定し、75歳で亡くなれば、本人が本来受け取るはずの年金を受け取れないばかりか、受給額が高い分、遺族に課される所得税も高くなります。
また、受給開始を遅らせたために、「厚生年金の家族手当」とも呼ばれる「加給年金」が受け取れなくなってしまう場合もあります。「加給年金」は、厚生年金の加入期間が20年以上ある被保険者が65歳に達したとき、扶養する65歳未満の配偶者や高校生までの子どもがいると支給されます。「加給年金」には、配偶者の生年月日に応じた「特別加算」もあります。
つまり、ご本人が開始年齢を後ろ倒ししたために、配偶者が65歳を過ぎてしまえば「加給年金」も「特別加算」も受け取れなくなる可能性があるのです。受給開始は本人だけでなく、配偶者の年齢も配慮が必要です。ご夫婦でよく話し合って決めたほうがよいでしょう。
では、「繰り下げ受給は得だ」と言えるのは何歳なのか……受給開始70歳なら81歳で65歳からの受給総額を超え、75歳なら86歳で超えるそうです。厚生労働省『簡易生命表』によると、令和2(2020)年の日本人の平均寿命は男性が81.64歳、女性が87.74歳なので、平均寿命を超えて長生きすることですね。