(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢になれば、だれしも病気のリスクが高まります。日本の健康保険制度はよくできていて、窓口負担は最高でも3割ですが、それでも入院手術等が必要となれば、支払額は跳ね上がり、家計を大きく圧迫することになります。対処法はあるのでしょうか。※本記事は『会社も役所も銀行もまともに教えてくれない 定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)から抜粋・再編集したものです。

老後に頼りになる「高額療養費制度」

病気やケガをして病院にかかっても、医療費の自己負担額は最大でも3割。年齢や所得によっては1割、2割で済むこともあります。なぜなら、健康保険に加入しているからです。窓口で保険証を提示すれば、医療費は大きく減らすことができます。

 

しかし、病気やケガの状態によっては、入院や通院が長引き、医療費が高額になってしまう場合があります。そんなときに役立つ制度が、高額療養費制度です。

 

高額療養費制度は、1か月(毎月1日から末日まで)の医療費の自己負担額が上限を超えた場合に、その超えた分を払い戻してもらえる制度です。自己負担額の上限は、年齢や所得の水準によって変わります。

 

さらに、過去12か月以内に3回以上自己負担額の上限に達した場合は、4回目から自己負担額の上限が下がります(多数回該当)。たとえば、年収200万円の人(70歳未満)の1か月の医療費が100万円で、3割負担で30万円を支払ったとします。それでも、この人の自己負担限度額は5万7600円です。残りの24万円ほどは、高額療養費制度の申請を行うことで戻ってくるのです。

 

◆高額療養費制度の自己負担限度額

高額療養費制度は、いったん先に医療費を支払って、あとから払い戻しを受ける制度ですが、前もって健康保険に「限度額適用認定証」を申請しておけば、自己負担分だけの支払いだけで済ませることもできます。あとから戻ってくるとはいえ、一時的に立て替えるのは大変な場合もあるでしょう。そんなときに役立ちます。

 

*厚生労働省保健局「高額療養費制度を利用される皆さまへ」より作成
*厚生労働省保健局「高額療養費制度を利用される皆さまへ」より作成

 

*厚生労働省保健局「高額療養費制度を利用される皆さまへ」より作成
*厚生労働省保健局「高額療養費制度を利用される皆さまへ」より作成

 

高額療養費制度はとても心強い制度ですが、カバーできない費用もあります。たとえば、入院中の食事代、差額ベッド代、先進医療にかかる費用などです。

 

入院中の食事代は、基本的に1食あたり460円となっています。もしも1か月入院したら4万円ほどになります。

 

また差額ベッド代は、希望して個室や少人数部屋(4人まで)に入院した場合にかかる費用です。金額は人数や病院によっても異なりますが、中央社会保険医療協議会の「主な選定療養に係る報告状況」(令和元年7月)によると、1日あたりの平均は6354円となっています。もっとも、個室のみの平均が8018円と突出して高く、2人部屋だと3044円、4人部屋は2562円などとなっています。

 

そして先進医療とは、厚生労働大臣が認める高度な技術を伴う医療のことです。先進医療の治療費は健康保険の対象外なので、全額自己負担です。

 

しかし筆者は、これらの費用に保険で備える必要はないと考えています。

 

そもそも健康保険や高額療養費制度があることで、医療費はそれほどかからないのですから、食事代や差額ベッド代については、できるだけ貯蓄でまかなうようにすべきでしょう。

 

また、先進医療が必要になる確率は非常に低いものです。厚生労働省の「令和3年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告について」によると、令和2年7月〜令和3年6月の1年間で行われた先進医療の患者数は5843人。単純に日本人の人口(1億2500万人)で割れば、先進医療を受ける確率はわずかに0.004%です。

 

しかも、がんの治療として実施数の多い陽子線治療は1285件(1件あたり約265万円)、重粒子線治療は683件(1件あたり約319万円)です。もちろん、これらの治療を受ける可能性はゼロではないものの、とても低いといえるでしょう。

 

先進医療で200万円、300万円などというと、高く感じられるかもしれません。しかし、先進医療がすべて高額なわけではなく、なかには数万円〜十数万円で済むものもあります。

 

仮に、年齢が低いときに保険に加入しているなら、保険料は割安なのでそのまま加入していてもいいのですが、加入していないのであれば、定年間近でわざわざ医療保険(の特約)やがん保険などで備える必要はないというのが、筆者の考えです。

 

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