(※写真はイメージです/PIXTA)

環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素に配慮した企業を重視するESG投資において、資源エネルギーや防衛は、投資が敬遠されていた産業です。ところが、ロシアのウクライナ侵攻によってがらりと変わり、いまや注目の的になっています。これからのESG投資で、この2つの産業をどのように捉えるべきなのでしょうか? アライアンス・バーンスタインの責任投資推進室長、臼井はるな氏が考察します。 

国防予算を倍増させるドイツ

防衛産業がこれまで悪者扱いされた理由は容易に理解できます。端的にいえば、人間を殺す製品を作っていて、それが悪者に売られることが多いからです。

 

国防支出は世界的にも低下傾向が続いてきました。世界銀行によると、各国の国防支出の対国内総生産(GDP)比率は過去40年間で最低に近い水準にあり、米国では3.7%、世界全体では2.4%です。

 

それが、ロシアのプーチン大統領によって、平和が当たり前ではない時代に逆戻りさせられたのです。多くの政府は、ソフトパワーには限界があり、私たちの価値観や社会を守るためには軍事力が必要だという思いを強めています。

 

象徴的な動きがドイツです。最近、ドイツはロッキード・マーチンにF-35戦闘機35機を発注しましたが、これはほんの始まりに過ぎません。

 

第二次世界大戦後、国防支出を厳しく制限してきたドイツにとって、2022年の国防予算を1,000億ユーロに倍増させることは極めて大きな変化です。防衛産業に対する世論がいかに変化しているかを示しています。

 

これまでの話から、お伝えしたいESG投資のポイントは3つあります。

 

1.ESGの課題は絶えず変化する

私たちが生きる世界の変化に応じて、ESGの重要課題もまた変容します。複雑で微妙なESGの特性を投資に反映するためにも、環境の変化に応じて評価手法を見直していくことが重要です。

 

2.「S」を忘れてはいけない

ESGでは「E」の環境問題が重視されがちですが、「S」の社会的な問題も重要であることを再認識すべきでしょう。エネルギー価格の高騰は消費者にとっては増税のようなもので、特に低所得世帯に大きな打撃を与えかねません。民主主義を守ることは、自由を尊ぶすべての社会にとって不可欠です。

 

3.特定業種の排除には欠点がある

特定の業種や産業を投資対象から排除すると、投資家と企業との対話の機会が減り、責任あるビジネス慣行の促進が阻害されかねません。投資家はレッテルを貼って単純化しすぎないよう注意する必要があります。

 

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※本稿は、リサーチブログ「知の広場」の「ESGの新しい観点: エネルギーと防衛」を参考に、再編集したものです。詳細については当該ブログをご覧ください。
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